あかいみはじけた『ルポルタージュ』

小学校の授業で、『赤い実はじけた』という名作を読みました。
国語の教材だったんですが、それはまさに初恋の代名詞。
今もなおあるかはわかりませんが、当時私たちはみんな「わたしの赤い実はいつはじけるのだろう…?」とドキドキしたものです。

売野機子/幻冬舎
『ルポルタージュ』

恋愛する大人がマイノリティとなった2033年の日本。そんな社会を象徴する非・恋愛コミューンがテロ被害に遭う。
新聞記者の主人公が被害者のルポルタージュを作成する中、事件と関係があるとされる人物と出会い、恋に落ちるが…。

この作品の中では社会的に恋愛がかなりきっぱりと“ダサイもの”と扱われていて、結婚は子供を産み人類繁栄につながることで、恋愛は子供が持つ感情の動きですわ、みたいに描かれています。
でも大人でも恋をする人はいて、そういう場合は公認で不倫をしていたりする。
ううーむ。高度すぎてよくわからない。

でも実際今の世の中も、いつのころからか草食系とか恋愛離れとか未婚率出生率がどうのこうのと言われていますよね。
なんかみんなが究極に割り切っちゃったらこんな風になるのかも…と思うと、ぞっとしないでもない。
もちろん恋愛も選択肢の一つで、強制することではないし、結婚だってしなくたって悪くない。でも、なんか、もっと楽しいこともいっぱいあるよ!?と言いたくなる。
特に80年代半ばくらいに産まれた人たちは混乱するんじゃないでしょうか。
中高生時代にキャリアウーマンがもてはやされ、進学したら就職氷河期にぶつかり、必死で就職したら今度は未婚女性が負け犬と言われ、今では婚活婚活とそこら中でパーティが開かれている。
なにこれ。
自分が生きてきたったた数十年で、恋愛結婚出産(あるいはプラスで就職)の概念がぐるぐると変わりすぎてやしませんか!?わかるけど!!
そんなあやふやな概念に振り回されるくらいなら、いっそこの作品のような世界の方がいいのか…と思ったりしなくもないけど、そんなことはない、と言いたい。

でも、なんやかんや騒いでますが、この作品でグッとくるのは、恋に落ちる瞬間がたくさんあって、それはとても素晴らしくとてもヒリヒリするってことなんです。
こればっかりは読んでいただくしかない。
みんなでヒリヒリしませんか。
傷つくことがわかっていたとしても、実らなくても、落ちちゃったら仕方ないよね、恋。みたいな。

1巻読んで、各方面で絶賛記事が出て、面白い気持ちはざわつくけどそれが何なのかわからず、2巻でざわつきが大きくなって、こりゃ3巻を待った方がいいのか?でもそれまでに知ってもらうべきじゃないのか?
…そんな葛藤で今この文章を書いております。
それって…まさしく恋!?
冗談はさておき(冗談のつもりはないですけど)、とりあえずこれは3巻でギャー!となれそうな気配がビリビリですので、一人でも多くの方が今のうちに手に取ってくださいますように。祈ります。


今年の夏は早かった。秋は浮かれづらい。

やまなか(仮)
貯蓄もないのに漫画をジャケ買いしては一喜一憂しているどうしようもない人間。
狭く浅く生きています。