天国地獄の一つ前『死役所』

人は死んだらどうなるんでしょう。
天国?地獄?無?
死んだ人とは話せないので、本当のところはわかりません。

今回は、そんな「死後の世界」の一つ手前、の世界の作品です。

あずみきし/新潮社

タイトルや表紙のインパクトから、「ああ、後味があまりよろしくない系の…」と思って敬遠する方も多いと思います。
実際私も知人に勧めてそういう反応が返ってきました。
でも半々くらいなので、そこは安心してください。半々ですけど。

このお話の世界では、死んだらまずこの死役所に行きます。
そこで色んな部署があり、死因で割り振られ、自分の死因と向き合う…というのが主な流れです。
自覚的にそこへ来る人もいれば、自分が死んだ自覚もなく来る人も多い。
彼らは何故死んでしまったのか?
自分の死後・あるいはその前後、生きている人たちは何を思うのか?
そして死役所で働いている職員たちは何者なのか。

死ぬって想像するだに怖いし、嫌だし、かといって永遠に生き続けたい訳ではない、でも、というループ。
でももし死後の世界にこういう事務的な場所があったなら、少し恐怖が紛れるような気がする。
また、死は無自覚に訪れるものなんだなあと再認識します。生きてるって奇跡だなあと逆説的に気づく。

ちなみにこの作品内では、死んでまず死役所に行き、死後の世界への申請書を提出するのですが、そこから先は書かれていません。
成仏とか地獄といった表現が出てくるので、多少のルートが違うことは想定されます。
成仏した先には何があるのか、地獄で何が待ち受けるのかは一切書かれていません。
死神とか閻魔大王の息子とか霊界探偵とかいたりするんだろうか。

メインのキャラクターはいますが、基本的に毎回主役が変わるオムニバス形式なので、ちょっと手にとって読んでみてはいかがでしょう。
その時にどうか後味がいい回にあたってもらえますように。
悪い回は悪いので。それが面白さでもあるんですけど。


設定的に不謹慎極まりないけど、そこを無視すると、ちょっと働いてみたい場所ではあります。

やまなか(仮)
貯蓄もないのに漫画をジャケ買いしては一喜一憂しているどうしようもない人間。
狭く浅く生きています。