『役者の葛藤と闘いが描かれる作品です』

舞台『タドル』での文音さんの役柄と、あらすじを教えてください。

映画を撮影するというストーリーの舞台で、その映画が劇中劇として進行していくのですが、私はその映画に出演する女優・黒木あん役です。
私たち若者が経験したことのない「戦争」という事実に基づき、想像して、ちゃんとしたものを伝えなければいけないという役者の葛藤と芝居に対しての闘いが描かれる作品になっています。
あんは凛とした女性で、言葉が少なくても存在感を感じられる女優です。また、強い信念をもっていて、それ故に不器用なところもあります。私自身はちょっとウッカリさんなので、あんのそういうところに憧れます。私もしっかりしないきゃ…です(笑)。

ブログを拝読して、とても言葉を大切にされている印象を受けました。

そうですね。言葉を話せるのって、人間だけじゃないですか。
だから大事にしたいなと思います。

『伝えたいことを全身を使って表現することが大事』

女優として活動していく上で、影響を受けたものは何ですか?

2年間、ニューヨークに演劇留学をしていたのですが、その時の先生方の言葉に大きく影響を受けました。
その中でも、『役者は武器がない』という言葉が印象に残っています。
アーティストであれば歌や楽器がありますが、役者は何ももっていない。でも自分の体自身が全ての楽器だと考えて、音を奏でればいいんだ、と。
本当にその通りですよね。伝えたいこと、作品を、全身を使って表現することが大事だなと。
今でもその言葉を大切にしながら、これからも役者として歩んでいきたいと思っています。

2015年を振り返ってと、2016年の目標を教えてください。

2015年は、日本に帰国して、ありがたいことに本当にたくさんの作品に関わらせていただき、積み重ねの年でした。
アクションの現場も勉強させていただいたり、映画の現場でもキーパーソンの役をいただいたり。
これからの準備を着々としつつ、自分の足で新たに歩き出すような一年でした。
2016年は、それらが開花し、更に新しいことに挑戦していけたらいいなと思っています。

■文音(あやね) プロフィール
1988年3月17日生まれ。東京出身。
2008年公開の映画『三本木農業高校、馬術部』(監督:佐々部清)の主役として女優デビュー。第33回報知映画賞新人賞、第32回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その後、テレビ、舞台などで様々な作品に出演している。主な出演作品はTV『SAKURA~事件を聞く女~』(TBS)ほか。

■舞台『タドル』http://www.pu-pu-juice.com/archives/performance/22_23
名もなき兵隊が残した一冊の日記を巡る二作品上演する。
現代『兵隊日記 タドル』では、ある撮影現場で役者たちが戦争とは一体なんなのか答えのないテーマに挑む姿を、過去『兵隊日記 ツムグ』では第二次世界大戦という激動の時代を、家族とともに必死で駆け抜けたひとりの名もなき兵隊とその家族の姿を描く。
2015年12月17日(木)〜27日(日)、中目黒キンケロ・シアターにて。

撮影:大村祐里子