『“天真爛漫だと面白くない”』

映画『東京ウィンドオーケストラ』の台本を初めて読んだ時の感想はいかがでしたか。

一番最初は、天真爛漫な明るいヒロイン像で読みました。
初めての本読みの後、監督から『天真爛漫だとあまり面白味がない』と言われ、色んな試行錯誤を経てあんなふてぶてしい主人公になりました(笑)。

演じていておもわず笑ってしまったシーンはありますか?

監督から『撮影中、オーケストラの10人と仲良くならないように』と言われていたのですが、オールロケでずっと一緒に撮影していると、どうしても仲良くなっちゃいますよね。でも作品ではずっと対立している。
ただでさえ個性豊かな俳優さんたちが、撮影が始まるとありとあらゆる顔で私を睨んできて、にこやかな普段とのギャップが可笑しくてたまらなくて…笑い上戸な私には辛かったです(笑)。

この作品の一番の見所は何でしょうか?

あらすじ上で劇的なことは特に起こらず淡々と進んでいきますが、それぞれの思惑が交差していて、良い意味での裏切りがあるのが見所だと思います。単純なストーリー展開の中でクスッと笑えるところがあるんです。
近頃は映画でも情報量で溢れるような作品が多い中で、この作品は頭を空っぽにしても安心して楽しめるのも、この作品の魅力の一つです。

『役を演じる楽しさ』

監督とは同世代ですが、現場の雰囲気はいかがでしたか。

監督をはじめ、スタッフさんも若い方が多く、フレッシュな現場でした。とにかくエネルギッシュでパワーに溢れていました。
初めて台本をいただいて天真爛漫なイメージで本読みをしてから、あんなにふてぶてしく言葉にも抑揚がないヒロインになるまで、台本は一切変わっていないんです!その監督の切替の速さや決断力は凄いなと思いました。

自分が同じ立場だったらどうしますか?

私だったら絶対にすぐに上司に相談します!だからこの樋口詩織は、ものすごく肝の座った女の子だなと思います。
観た方の感想でも、『自分だったらどうするか』は多いですね。隠し通す方もいらっしゃるし、すぐ言う方もいる…そういう意味でも、この作品は“なさそうだけどあり得る話”なんですよね。

この作品で中西さん自身が成長したところを教えてください。

今までは大人しい良い子のイメージの役が多かったのですが、今回このような女性を演じて、自分と正反対の役を演じることってこんなに楽しいんだと気づかせていただきました。役者として演じる楽しさを学び、感じました。

■中西美帆
1988年12月5日神戸市生まれ。2009年「奇跡の人」で初舞台を踏む。2011年、NHKドラマ「神様の女房」で本格的にデビュー後、NHK大河ドラマ「八重の桜」(13)、映画『永遠の0』(13/山崎貴監督)などに出演。『喰女-クイメー』(14/三池崇史監督)では市川海老蔵の相手役を熱演した。2017年新春公開の映画『惑う After the Rain』(16/林弘樹監督)で準主役を務め、続く『東京ウィンドオーケストラ』(16)が記念すべき初主演作となる。

■映画『東京ウィンドオーケストラ』 http://tokyowo.jp/
屋久島で日本有数の吹奏楽団を招いたコンサートが開催されることになった。担当職員・樋口が迎えに行くと、そこには観光気分の10人の楽団員たち。だが島をあげての大歓迎を不審に思った彼らは、自分たちが有名楽団と間違われていることに感づき逃げ出そうとする。同じ頃、彼らが偽物だと知った樋口は自分のミスを隠すため、彼らを“本物”として騙し通すことを決意する。果たして樋口とアマチュア楽団員たちは、このピンチを乗り切ることができるのか!?
2017年1月21日より、全国順次公開中。

撮影:大村祐里子