『否応なく向き合った』
この役に決まったきっかけを教えてください。
藤井道人監督が長編を撮ると伺って是非出演したいと思い、ワークショップやオーディションに参加したのがきっかけです。
役が決まってから何度も話し合いを重ね、徐々に役の輪郭をハッキリさせていきました。
実は、元々私が女優になれたのは、別の作品で藤井監督に見つけていただいたからなんです。いつも芝居でさらけ出した感情を受け止めてくれたり、気持ちの蓋を開けてくださるんです。
ヘビーな役でしたが、撮影以外の時間はどう過ごされていましたか?
撮影期間は1年ほどでした。夏に序盤の事件をそれぞれ撮って、冬にまた集まって劇中の3年後を撮影しました。その後さらに春にフィリピンに行っています。
夏の撮影後、3年という期間の役作りをしっかりやりました。髪型もあの状態だったので、否応無く毎日この役について考えさせられました。苦しかったですが、3ヶ月はあっという間でした。
『日常の幸せを』
演じていて1番印象に残ったシーンはどこですか?
髪を切り落とすシーンです。本番1回しかできないので(笑)、役者的な緊張もありました。切り落としていくごとに自分の中に溜まっていたものが削ぎ落とされていく感じがしました。
今後やってみたい役はありますか?
純粋に色んなものに挑戦してみたいです。今回は2度とできない役というか…あの頃しか撮れなかったものがあると思うので。
役者だけではなく、自分で作品を作ってみたいです。その時は自分は出演せずに、監督に集中してみたいですね。
改めて映画『光と血』の見どころを教えてください。
私がこの作品に感じたのは、正しさとは何か?ということなのかなと。訪れる出来事に対する選択肢がたくさんあって、その中で彼らが選んでどうなっていくのか。
正直、楽しいお話ではありません。逆説的になりますが、この作品を見たことで、今の日常がどれだけ素敵なものかを気づいてもらえたらいいなと思います。
■打越梨子 うちこしりこ
1995年1月20日東京都生まれ。
16歳で家族とともにバックパッカーを経験、世界一周する。帰国後役者として活動。
近年の主な映画出演作は、『蹄』監督:木村あさぎ(大阪アジアン映画祭2017にて上映)、『アーリーサマー』監督:中村祐太郎、『東京』監督:藤井道人、短編『デリバリー』監督:村中なる美、など多数。
■映画『光と血』 http://hikaritochi-movie.com/
『オー!ファーザー』『7s /セブンス』などの監督、藤井道人が、被害者と加害者となった複数の男女の喪失と再生を描いたドラマ。女子高校生や婚約したばかりの青年、被災地でのボランティアに励む青年とその姉の人生が予期せぬ事件や事故によって交錯していくさまを映す。出演は世良佑樹、打越梨子ら。衝撃的で重厚な内容に引き込まれる。
撮影:大村祐里子