『小さいころから身近にあった』

映画『三つの光』に出演が決まった経緯を教えてください。

吉田監督とは元々面識があって、実はずっと前に映画にも出てくるあのスタジオに連れて行かれたことがあるんです(笑)。その後、関係があるとは全く思わず、普通にワークショップに応募しました。
ストイックな方なので、『知り合いだからって贔屓しないからね』と言われ、私も負けじと頑張りました。

演技をしようと思ったきっかけは?

大学在学中に一度音楽から離れたくなって、1年休学したんです。その時に何かしないとダメになってしまう…と思い、偶然見つけた1年間の映画学校に通ったのがきっかけです。
今思えば、小さい頃からずっと音楽を勉強していく中で、オペラやミュージカルが身近にあったので、お芝居とは自然に繋がりがありましたね。

お芝居の魅力って何ですか。

自分が自分じゃなくなる瞬間に、解放されることです。
逆にそこが悩みでもあります。私は結局自分のためにしか芝居をしてないんじゃないかと…。
今回は色々抱えている女の子の役だったので、撮影中はとても苦しかったのですが、撮り終えたらスッキリしたんです(笑)。役と一緒にデトックスしたみたい。

『ほんのちょっとの一歩』

監督とのディスカッションはどのようなものでしたか?

まずキャストが決まってから脚本を練られていったので、まず初めにメインの4人で集まって、色々話し合いをしました。
それぞれがどういう人で、どんな反応があるのか、楽器は何ができる?とか。そこから監督がヒントを得て作品ができていきました。

印象的だったシーンはどこですか。

部屋で来客があった後、苦しみもがくシーンです。実は撮り直してるんです。
1回目の後で監督に『もっとできると思ってたでしょ?』と言われ、めちゃくちゃ悔しかったですね。その後チャンスをもらって、あのシーンができました。
タイトな日程の中で我が儘言わせてもらったぶん、必死でした。

改めて、映画『三つの光』の見どころを教えてください。

この映画は、救いを描いていません。大きく日常が変わるわけじゃない、でも、ほんのちょっとの一歩を踏み出したら…という作品。だからこそ、毎日に閉じ込められているような気がしている人にオススメできます。
吉田監督の描く東京って、とても素敵なんです。ドライさや閉塞感が心地良い。今作は音にもとてもこだわっているそうなので、沢山の人に映画館に足を運んでもらえたらなと思います。

■小宮一葉(こみやかずは)
東京音楽大学ピアノ科卒業。
在学中に今泉力哉監督作品に出演したことがきっかけで芝居を始め、2012年に公開された同監督の映画『こっぴどい猫』でヒロインを演じた。
その他主な出演作に、『ひ・き・こ 降臨』主演(’14/吉川久岳監督)、『サヨナラ人魚』主演(’13/加藤綾佳監督)、 『お兄チャンは戦場へ行った?!』主演(’14/中野量太監督)『5 to 9』(’15/宮崎大祐監督)増田壮太「僕らはシークレット」MV(太田信吾監督) 全日本宗教用具組合「小さな祈りのプロジェクト」ほか、CM、舞台『マームとジプシー「cocoon」』(作・演出・藤田貴大)など。
また2017年からtapestokrecordsより〝faela〟として音楽活動を開始。single「em」がitunes、ototoyにてリリースされている。


■映画『三つの光』 http://threelights.tokyo/
国内外で評価の高い吉田光希監督待望の最新作であり、ベルリン国際映画祭、香港国際映画祭にも出品された『三つの光』。
深夜の倉庫街で楽曲制作をするマサキとKの元に、抑圧された日常から逃れるようにして3人の女が集まってきた。自宅でピアノ演奏を撮影し、動画共有サイトにアップロードを続けるアオイ。夫とすれ違いの生活を続ける専業主婦のミチコ。歌うことの意義を失いつつあるシンガーのアヤ。マサキとKとの出会いによって自分を解き放っていく3人。それは、共に作り上げていく一つの音楽に結実するように思われたのだが…。

撮影:大村祐里子