ホンモノの修羅の国がここにある『アシュラ』

☆☆☆☆(星4つ)

先週は「哭声/コクソン」で、今週は「アシュラ」です。
この2本を連続で観ると「いつのまにか韓国と日本の映画におけるバイオレンス表現はずいぶん差がついてしまったんだな…」と思い知らされてしまう。もちろん日本映画にしかない魅力もたくさんあるんだけど。
とにかく容赦のない攻め方に国民が総出で盛り上がってるところがいいですね。

難病を抱えた妻の治療費を稼ぐため日々汚職に励むチンピラ刑事のハン・ドギョン(チョン・ウソン)は警察を辞めて悪徳市長(ファン・ジョンミン)の悪事を裏で処理する仕事人として再スタートしようとした途端、市長逮捕のためなら手段を選ばない外道検事(クァク・ドウォン)に目を付けられる。
過去の汚職の証拠を握られ、仕方なく二重スパイとして働くことになるが、市長の悪事はエスカレートし、検事の要求は厳しくなる一方。
地獄の板挟みで身も心もボロボロになったドギョンの行く末はいかに…!

「コクソン」ではダメ警官を演じていたクァク・ドウォンが冷酷なキレ者検事、ファンキーな祈祷師を演じたファン・ジョンミンが外道市長でそれぞれ出演していて、立て続けに観るとそんなギャップも楽しめる今作(どっちも血と暴力にまみれた地獄なので一気見にはそれなりの覚悟が必要だけも思うけど…)。
主人公のドギョンは(難病の妻という同情の余地はあるものの)実際かなり悪どいことをやってるし、保身のためにわりといろんな人に迷惑をかけていて、なんとかこの泥沼から抜け出そうとするたびに過去のツケが回ってきてドツボにハマッていく、という役柄がとにかくいい。
見た目はめちゃくちゃ精悍なのにやってることは完全にダメで、主人公補正も一切効かないところがリアルな共感を呼ぶかもしれない。仕方なく、仕方なくでやってるうちにいつのまにかドツボにハマってる姿は身に覚えがないこともない。そんなことありませんか、そうですか。

またドギョンを追い詰めるのは市長、検事だけでなく、薬物中毒の情報屋や汚職に一枚噛んでおこぼれにあずかろうとする先輩刑事、そしてドギョンを慕ってした後輩までもが渦巻く欲望に呑み込まれて牙を剥く始末。
出てくるやつらが全員ろくでもない。
繰り返すようだけど、こんな掃き溜めから抜け出すぞ!→昔の悪事がバレて御用!のパターンが何度も出てくるのには悲惨なんだけど笑ってしまう。

絶妙なキャスティングから血みどろのラストまで韓国発暴力映画のいいところを凝縮したようなテイストでその手のものが好きな人はマストな一本。

☆☆☆☆…登場人物がしこたま酒を飲んでは飯をかっ食らってるのを見るとこのテンションの原動力がわかる気がする。


強烈な映画を立て続けに観て疲れたので、大阪の名店「カドヤ食堂」の優しいラーメン。一日限りの東京出店ありがとう。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
https://twitter.com/odkysyk