副題に偽りなし!見事なバトンタッチに涙『クリード チャンプを継ぐ男』

あらすじ:ロッキーが(イマイチやる気のなかった実の息子の代わりに)永遠のライバルであり親友アポロ・クリードの息子を鍛える。

☆☆☆☆☆(星5つ)

「ロッキー」といえば2007年の「ロッキー・ザ・ファイナル」で、すっかり衰えたロッキーが現役最強ボクサーとエキシビションマッチをやるという、実際に老境に差し掛かったシルベスター・スタローンとロッキー・バルボアの境目がいよいよ分からなくなるような傑作で見事に完結したと思っていたけど、今度はこうきたか。
この映画、監督のライアン・クーグラーがスタローンのところに脚本を持ち込んで実現した話だそうで、息子ほど年齢の離れた若者との運命的な邂逅という点でも、ド新人だったスタローンがプロデューサーに「ロッキー」の脚本を持ち込んだ逸話と重なるという点でも、映画のストーリーときれいにリンクしていて、まさに生まれるべくして生まれた作品という気がする。もちろんポッと出の新人のアイデアをあっさり採用してしまうスタローンの懐の広さもすごい。

父親がボクシング界の伝説的チャンピオンだったことを知ったアドニス(マイケル・B・ジョーダン)はやがてその血に導かれるようにボクシングにのめり込んでいくんだけど、このアドニスくん、アポロの奥さんに何不自由なく育てられたおかけできちんとカタギの職業に就いてるし、性格も素直ないい子なんですよね。
(たまに突然短気を起こすのは父親譲りの闘争心か単に話の都合ということで…)
ボクシングの師匠を求めて突然現れたアドニスの頼みをロッキーも最初は断るんだけど、その人柄にほだされてついコーチを引き受けちゃう。
このアドニスの天性の人懐っこさが“ロッキーがリングに立たない「ロッキー」シリーズ”という今作に懐疑的だったファンの心をグッと掴んだんじゃないかと思う。「まぁこいつならいいかなぁ」みたいに。その点、息子推しで同じくロッキーがリングに立たない「ロッキー5」は…いや、やはりこの話はやめましょう。

「ザ・ファイナル」の最後、エイドリアンのお墓参りのシーンで「ロッキー」は有終の美を飾ったと思ってたけど、老いたロッキーがアドニスとの出会いを通じて再び人生に火を灯していく姿を見てると「人生ってやつは有終の美のその先も続くんだ」ということが伝わってくる。これは泣けた。本当に泣けた。

1試合1ショットで撮られたボクシングシーンが「ロッキー」史上に残る迫力だったことも忘れてはいけない。シリーズを通じて映画に込められ続けてきた魂みたいなものがしっかりと受け継がれているのを感じた。
たとえそのリングに立っているのがロッキーでなくとも。

☆☆☆☆☆…映画館で全然知らない両隣のおじさんと3人して泣きながら観てしまった。続編も超期待!

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劇中に登場するフィラデルフィア名物のチーズステーキサンドが最高においしそうだったので、負けずに出しておこう。これはイギリスで食べたやつだけど…。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
https://twitter.com/odkysyk