真冬に観よう“美しすぎる幽霊屋敷”『クリムゾン・ピーク』

あらすじ:雪に閉ざされたお耽美屋敷で繰り広げられる紳士淑女と幽霊たちの恐怖のドタバタ劇。

☆☆☆(星3つ)

「パンズ・ラビリンス」でファンタジー・ホラーの金字塔を打ち立てたギレルモ・デル・トロちゃんが満を持して(趣味全開で)放つゴシック・ロマンス・ホラー。
とにかく凝りまくり、美しまくりのお屋敷を舞台に、これまたゴシックな魅力満点のミア・ワシコウスカ×トム・ヒドルストンの陰謀渦巻くロマンス!
雪に閉ざされた世界で一体何が起こるのか!と期待値が上がりまくった状態で観たけど、さすがデルトロちゃん。こっちの予想のガツンと裏切ってくる。
開始3分で正々堂々、逃げも隠れもせずに出てくる幽霊を見て「あっこういう感じなんだ」と悟らされた。
オーケーわかった。大丈夫、まだあわてるような時間じゃない。

もちろん「タイトルの「クリムゾン・ピーク」とはなんなのか」とか「トム・ヒドルストンとジェシカ・チャスティンの美しくも妖しい(怪しい)姉弟は一体…」みたいなイメージどおりの謎や展開もちゃんとある。
そしてなにより舞台のお屋敷。映画のために実際に建てられただけあってこれが実に素晴らしい造形で、特に穴の空いた天井から秋は枯葉、冬は雪が降り注ぐところなんか本当に美しい。
住みたいかと言われるとちょっとアレだけど、このお屋敷を大きいスクリーンで眺められるだけで料金の元が取れるんじゃないかと思うくらい。

でもそういうお耽美要素にうっとりして美麗な世界に没入しかけたころに、目覚ましみたいにガツンと幽霊が出てきて現実(?)に引き戻される。
そうだ、これはクリーチャー大好きデルトロちゃんの映画だった。
B級ホラー丸出しな幽霊のノリと豪華絢爛な映画の雰囲気を合わせようともしないところがデルトロちゃんの痛快なところであり、配給会社の人間が頭を抱えるところだ。やっぱりそうこなくっちゃいけない。
でもガッツリ出てくる幽霊たちははっきり言って大して怖くないので、ホラーが苦手な人でも大丈夫なんじゃないかと思う。

まぁ「それより本当に怖いのは…」っていう古典落語みたいな話だし、最後のほうはサバイバルアクションの様相を呈する今作。
儚げなイメージと併せて意外なほどのフィジカルの強さを見せつけたミア・ワシコウスカを筆頭に、絶妙に配置されたキャスティングと壮麗な美術は必見です。もちろんその筋の人はデルトロ節炸裂の幽霊も楽しめます。

☆☆☆…「徹底的なお耽美」と「B級ゴーストホラー」の折衷が楽しかったけど、デル・トロファンの気持ちとしてはどっちかに振り切った仕上がりも観たかったなとも思う。

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「お耽美映画なので何か美しい食べ物を」と思ってたのに気づいたらろくでもない焼鳥屋さんに入ってた。また誌面を汚してしまった。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
https://twitter.com/odkysyk