優れたラブコメは世界を救う『マン・アップ!恋するロンドン狂騒曲』

あらすじ:家族の手前もあって恋人は欲しいし、いずれは結婚もしたい。でも今は出会いを求めて華やかなパーティーに出向くより、ついつい部屋でビールを飲みながら大好きな「羊たちの沈黙」を観て過ごしてしまう…。そんな“こじらせ30代女子”ナンシー(レイク・ベル)が、離婚のショックから立ち直るためにブラインドデートの待ち合わせをしていたジャック(サイモン・ペッグ)にデートの相手と間違えられて、なんとなくそのままロンドンの街に繰り出すことに…。

☆☆☆☆☆(星5つ)

と、いつもテキトーに済ませるあらすじも今回は詳しめに書いてしまった。このあらすじだけ見るとどこにでもあるただのラブコメ映画で、まぁ実際にただのラブコメ映画ではあるんだけど、これがすごくよくできた隠れた名作だったので、日本では劇場公開どころかDVDにすらなっていない映画だけど、今回は予定を変更してぜひともご紹介しておきたい。

“こじらせ女子”とかそういう括り方はあまり好ましくないと思うんだけど、それでもこの素敵なナンシーについては(愛を込めて)そう呼ばせていただきたい。映画オタクだったり、飼い猫に某バンドのメンバーの名前(アクセルとスラッシュ!)を付けたり、ボーリングをこよなく愛好したり…。
そんなナンシーが偶然にも同じように青春をこじらせたジャックと出会い、好きな映画や音楽の話題で盛り上がる様子は、そのままボクらの理想の姿でもある。芸能人の不倫やアイドルの騒動なんかより、つまらない仕事の話や立派な理想の話なんかより、わけのわからない映画や暗い音楽の話を一緒にしたい、ありのままの自分を受け入れてもらいたい。そうですね?違う?違う人は今すぐブラウザを閉じて女性週刊誌でも読んでてください。

そんな運命的な二人のデートはつまらないことでナンシーの嘘がバレてあえなく終了。でもなんとなくお互いが気になる二人は…。
ということでそこから物語はさらに二転三転するんだけど、そこには必要なものが全部そろっていて、不要なものが一切ない素晴らしい出来栄え。
二人の周りの登場人物も一人残らず魅力的で、そして(これが大事なことだけど)88分しかないんですよね、これ。無駄に120分尺に引き延ばしたような映画が多い昨今、これはとても好感が持てる。やっぱり映画鑑賞は90分くらいが最高。

「マン・アップ!恋するロンドン狂騒曲」は決して映画史上に残る傑作ではないし、画期的な映像表現があるわけでもないけど、観る人を確実に幸せな気持ちにしてくれる確かな温もりにあふれているので、まあ、その、周りにWOWOWが観られる環境がある方はぜひ。DVD化の祈願をこめて。

☆☆☆☆☆…ボク宛に連絡をいただければ録画したやつをレンタルします。一緒にDuran Duranの「The Reflex」を熱唱しましょう。


ナンシーとジャックのようにパブでビールを飲みながら好きな映画(「アナコンダvs殺人クロコダイル」)の話をしたけど、完膚なきまでに盛り上がらなかった。人生は厳しい。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
https://twitter.com/odkysyk