あらすじ:うっかり火星に取り残されたマット・デイモンがディスコ音楽を聴きながらノリノリでサバイバル。
☆☆☆☆(星4つ)
2014年の傑作SF映画「インターステラー」で氷の惑星に取り残されてばっちりダークサイドに堕ちてたマット・デイモンが今度は火星に取り残される!
古くは戦争映画「プライベート・ライアン」でも敵地に取り残された新兵役を熱演してたりして、すっかり「取り残され芸」が板についてきた感があるけど、今回のデイモン氏は一味違った。
とにかく前向き。誰もいない、なんにもない火星でカメラに向かっておしゃべりしながらコツコツと生存に必要なもの(水、空気、食料…etc)を確保していく姿が、SF映画における宇宙観みたいなのを地味に打ち破っていておもしろい。
ほら、こういうのってなんかもっと、こう、孤独に苛まれたり、心の闇に呑まれそうになったりしてね、そういうイメージがあるんだけど、デイモン氏演じるマーク・ワトニーの狂気に近い前向きさは何があっても揺るがない。
仲間のクルーが残していった70年代ディスコ音楽がワトニーの孤独をかき消すように全編に渡って鳴り響いてるのもそれに拍車をかける。
かといって仮住まいの施設の外ではものすごい嵐が吹き荒れてたり、火星ならではの様々なトラブルが発生したりして、宇宙の厳しさはしっかりと描かれていて緊張感はバッチリ。
ただのコメディ映画じゃないです。ただ主人公がちょっとおかしいだけ。
そしてそんなワトニーをなんとかして生還させようと奔走する地球の仲間たちも負けず劣らずエネルギッシュな連中ばかりだ。普段ぼけっと生きている自分のような者はちょっと引いちゃうくらいに。
実際、登場人物全員がふりまくポジティビティにボクのような一般の観客は付き合いきれなくなりそうな瞬間もあった。「お前ら自分が優秀だからってなんでもできると思うなよ!」と。
でもふと「この映画の普通じゃないテンションなら、救出ミッションが失敗しても「ワトニーは火星で楽しく暮らしました、めでたしめでたし」で、なんとなくディスコ音楽が流れて終わりってこともあるんじゃ…」という不安が脳裏によぎって、それが終盤のスリリングな展開と相まって気づいたらばっちり手に汗握ってた。このへんの監督の巧みな手腕はさすがの一言。最後の最後でエイリアンが出てきたりしなくてよかった。
御年78歳のリドリー・スコットが大ベテランならではの手堅さと若さみなぎる異様な軽快さを見事に両立させて出来上がったハイブロウなSF映画。
IMAX 3Dで飛び出す火星じゃがいもをお楽しみください。
☆☆☆☆…火星で1年以上ひとりでがんばってる人を観てこんなことを言うのもアレだけど、ちょっと長かった。でもそれ以外は概ね最高です。
なにしろじゃがいもが食べたくなる映画だったので、観終わってからすぐにこの有様。地球は最高。
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
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