☆☆☆☆(星4つ)
「ソウ」「インシディアス」シリーズで一躍ホラー映画界の寵児となったジェームズ・ワン。最近ではホラーの枠を超えて、「ワイルド・スピード」シリーズ最新作で超特大ヒットを飛ばしたことも記憶に新しい、まさに大注目の映画監督なんだけど、それもあってか「もうホラー映画は撮らない」と引退宣言。
「死霊館」シリーズもこれでおしまいかと思いきや、ちゃっかりこの続編でもメガホンをとっていた。なんだやっぱりやりたかったんじゃないの!
前作から連投の超常現象研究家、ロレインとエドのウォーレン夫妻(ヴェラ・ファーミガ、パトリック・ウィルソン)はキリスト教会の要請でイギリスはエンフィールドに飛び、新たな心霊物件の調査に乗り出す。
そしてそれは後に「史上最長期間続いたポルターガイスト事件」として知られることになる…。
前作「死霊館」は実在の心霊屋敷を舞台に観客の心臓をめった打ちにする反面、流血なし、死人なし、家族愛ありのさわやかな喉越しでホラー映画の新機軸を打ち立てた名作だったけど、続編の今作でもその高潔さはしっかり保たれていて、カップルやファミリーにも優しい仕上がり。登場人物はみんな助け合いの精神を持った好人物ばかりだし、霊に襲われても他人を押しのけて逃げるような輩は一人も出てこない。
でもだからといって安心してはいけない。肝心の死霊のほうは完全に前作をはるかに超える暴れっぷりだ。
前置きなしの開始数分から大暴れしてくるし、通常のホラー映画だと「肝心な場面で心霊現象が起こらず、被害者の恐怖が世間に伝わらない」みたいな流れになりがちな警察の実況見分やテレビの取材の場面なんかでもお構いなしでガンガン出てくる。
こんなに自己主張が強い死霊が今までにいただろうか。
前作同様「流血なし、死人なし」にも関わらず、舞台の家をなめまわすように映すカメラワークを筆頭に巧みな演出で観客の心臓にダメージを与え続ける破壊力も健在。
「ここ怖いところだよな…」とわかってるのに怖い。でも目を閉じられない。
それに加えて死霊たちがカメラに餓えた新人芸人ばりのハングリー精神で出し惜しみなく現れるので、134分というホラー映画にしては異例の長尺を全く飽きさせない。
直接的な残酷描写を極力抑えたテクニカルな恐怖演出と、死霊たちの奮闘、そして悪魔に取りつかれる少女ジャネットを演じたマディソン・ウルフちゃんの神がかり恐怖演技の三位一体でお送りする、ポルターガイスト映画の新たな決定版。ぜひ劇場の暗闇で体験してください。
☆☆☆☆…わりとこの夏のデートムービーのダークホースだと思うけど、霊に、じゃなくて例によって責任は持てません。
前回に続いてイギリス絡みの映画だったので、またもグラストンベリーの写真で恐縮です。ビールのカップルにenjoy。かわいい。
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
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