目で食べろ!超特盛アジア丼!『ドラゴン×マッハ!』

☆☆☆☆(星4つ)

「ローグ・ワン」の盲目フォースおじさんとして世界的にブレイクしたドニー・イェン主演の「SPL/狼よ静かに眠れ」の続編。
原題もそのまま「SPL2」なんだけど、今回の主演トニー・ジャーとウー・ジンそれぞれの代表作(「マッハ!」と「ドラゴン・コップ」?)にちなんでか、非常に偏差値の低そうな邦題がついてた。
「これじゃ内容が全く分からないじゃないか」と思ったけど、でもまぁ「狼よ静かに眠れ」と言われても全然わからないので同じようなものかもしれない。そのへんのことはあきらめましょう。

殺人、誘拐、臓器売買なんでもござれの闇の組織を探っていた香港の潜入捜査官チーキット(ウー・ジン)は、ヤクザのゴタゴタに巻き込まれてなぜかタイの刑務所に収監。組織の息がかかった所長(マックス・チャン)に半殺しにされる。
しがない看守のチャイ(トニー・ジャー)は難病を患う愛娘の入院費を所長に工面してもらった弱味から見てみぬふりをしていたが、チーキットと自らの数奇な関係を知り、意を決してチーキット救出のため巨悪に立ち向かう…!

と、あらすじを書いてて改めて思ったけど、とにかくまぁものすごい盛り込み方で笑っちゃう。臓器売買、潜入捜査、誘拐、難病、殺人に各種家族の絆…香港映画のありとあらゆる要素をガンガンに詰め込んだまさに超特盛映画だ。
なので「さぞかし大味な映画になってるんじゃ…」とお思いの向きもあろうかと思うけど、これがなかなかに緻密な脚本で、全方位にとっ散らかったストーリーがうまくまとまる瞬間には思いがけないカタルシスがある。決して脳みそまで筋肉でできてる映画ではないのだ。

でももちろん筋肉のほうの活躍もすごい。トニー・ジャーとウー・ジンの主演コンビはもちろんのこと、マックス・チャン演じる超絶クールな刑務所長は敵も味方もチンピラだらけの中、ビシッとスーツをキメた出で立ちがめちゃくちゃにかっこいい。裏ボス、大ボス、中ボス、雑魚…と悪役の層が実に分厚く、アジアが誇る各種格闘がいっぺんに楽しめるまさに筋肉博覧会で見応えがある。

チャイは金のために悪事に目をつぶっているし、チーキットはいろいろあってヤク中、悪の親玉はめちゃくちゃ病弱…と登場人物が全員なんらかの「痛み」を抱えて生きているところも、「希望はマジで大事」という映画のド直球なメッセージと相まって泣ける。
希望はマジで大事。ありがとう、香港とタイのみなさん。

☆☆☆☆…こんな緻密な脚本を書いたのに日本では「ドラゴン×マッハ!」なんて題名で公開されてることを知ったら脚本家は泣き崩れるかもしれないな…。


渋谷の中華料理「喜楽」のワンタン麺は至高。焦がし玉ねぎの風味がたまりません。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
https://twitter.com/odkysyk