☆☆☆☆(星4つ)
90年代に青春を送っていたボクのような者にとって、自我に目覚めてから「バッファロー’66」が登場するまでの数年間、映画といえばまさに「トレインスポッティング」だった。
あのオレンジ色のポスターを飾り、サントラを聴き、(正直内容にピンときてないことを絶対に誰にも悟られないように)「トレインスポッティング」を愛好していた時代のことを考えると胸が苦しくなるけど、あれよあれよという間に続編ができてしまった。マジかよ。
前作のラストでゲットした大金を盗んで一人とんずらしたレントン(ユアン・マクレガー)が20年ぶりにエジンバラに帰ってきた。
あの頃の仲間といえば、気のいいスパッド(ユエン・ブレムナー)は妻子に逃げられた末に相変わらずのヤク中。色男のシックボーイ(ジョニー・リー・ミラー)はケチなゆすり業で生計を立て、喧嘩中毒のベグビー(ロバート・カーライル)に至っては刑務所で服役中という有様。
オランダで輝かしい生活を獲得したはずのレントンはなぜ帰ってきたのか。相変わらずどん底を生きる仲間たちとの和解は成立するのか…!
前作が公開され、まさにイギリスがカルチャーの最先端だった1997年から早20年。その間に時代は変わり、現在のイギリスが世界の最先端だとはとても言えない状況になってしまった。
そんなかの国を覆う停滞のムードが映画からもバッチリ漂ってきていて、「トレインスポッティング」は今も時代をクールに映し続けているんだな、と感心した。たとえそれがどのような時代であっても。
いかにノーフューチャーとはいえみんなまだまだ若かった前作に比べて全員がもはや中年(ベグビーに至っては初老)…前作の代名詞だった「Choose Life(未来を選べ」と言われてももはや選択肢が見当たらない。でも恐ろしいことにそれは観客のほうも同じなんですよね。新しい音楽にはついていけず、お金は減り、体重は増え…もう強盗でもするしかないですよ、ホント。
それでも映画では否応なくやってくる未来がしっかり描かれている。時代に取り残されようと、振り落とされようと生きていくしかない。そして残されたレントンは…おっとこれ以上は映画館で観てください。素晴らしいラストシーンです。
全員が全員見事に過去に囚われているせいか劇中ではフラッシュバック的に前作の映像が多用されるので、続編を観る前に前作を観る必要もありません。大丈夫。さぁ劇場へ急げ!未来を選べ!変なクスリはやるな!
☆☆☆☆…音楽も最近のイキのいいのが使われるけど、その「年寄りの冷や水」感が新しい音楽を必死に追いかけてる自分にはまたいい具合に効いてくるんだ…。
この映画を観た後はビールをガブ飲みするのもやむなし。かわいい柴犬チョコを添えて。
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
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