我らがシャマラン新たな挑戦に乾杯『スプリット』

☆☆☆(星3つ)

女子高生のケイシー(アニャ・テイラー=ジョイ)はクラスメイトの誕生日パーティーの帰りにいきなり車に乗り込んできた謎の男(ジェームズ・マカヴォイ)に昏睡させられ、そのまま誘拐されてしまう。ケイシーが目を覚ますとどこかの地下室にクラスメイト2人と共に監禁されていた。そして謎の男は現れるたびに性別も年齢も性格も異なる恐怖の多重人格者だったのだ。
彼の目的はいったいなんなのか。ケイシーたちは無事に脱出できるのか。

前作「ヴィジット」で興行、批評ともに成功し、見事復活を果たした我らがM・ナイト・シャマラン待望の新作。
今度のテーマは多重人格ということで、実際の症例を元にマカヴォイに潜む23の人格が企む恐ろしい計画と女子高生たちの脱出劇が同時進行していく様子はかなりスリリング。
「ヴィジット」もそうだったけど、近年のシャマランは「エアベンダー」「アフターアース」の頃のよくわからないモードから初心を取り戻したのかスリラー描写がキレッキレで普通にドキドキさせられる。

とはいえシャマランがこれをただの誘拐監禁スリラーで済ませるはずはない。物語には様々な謎や秘密が隠されているし、密室パートが多い内容で120分持たせるためにあの手この手で女の子たちの服が脱げていく。これは実にしょうもないながらなかなか効果的だ。お寿司にガリ、カレーに福神漬け、そして恐怖映画には適度なセクシー要素がなんといっても欠かせない。ものづくりの基本に忠実なシャマランの、伝統を守る真面目な性格が表れた演出と言えるだろう。

…すいません、適当なことを言いました。だって急に犯人が「お前は上着を脱げ」「お前は逆だ」とか命令してくるの全然意味が分からなかったのでつい…。

えーっと、あとは…なんかあったかな。もう特にないかな…。
なにしろ映画のインパクトある部分が思いっきり言っちゃいけないところで、ネタバレを巡って一部で激しい戦闘が行われた経緯もあるので、あまり書けることがないんですよね。シャマラニアンのみんなたちは絶対に観てくれとしか言いようがない。それ以外の人たちは、まぁ、その、いや!でもおもしろいですよ。広い心を持つことが世界平和への第一歩です。広い心を持ちましょう。

☆☆☆…近年の映画業界に対するシャマランからの挑戦状とも言える今作。単体の映画としては星3つだけど、その心意気には金メダルをあげたい。今後に期待。


鎌倉で食べたからあげ、おいしさのあまり人格が分裂しそうになった。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
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