☆☆☆(星3つ)
舞台は第二次世界大戦初期。連合軍兵40万人はフランス最北端の街ダンケルクでドイツ軍に包囲され、絶体絶命の窮地に陥っていた。
ダンケルク海岸で助けを待つ兵士たちの「陸の1週間」、包囲された兵士たちを助けるために自らの船でダンケルクに駆けつけるボランティア市民たちの「海の1日」、そしてその船を守るためにダンケルク上空でドイツ軍に立ち向かうパイロットたちの「空の1時間」という異なる視点と時制が同時進行する。
過酷な戦場からみんなたちは無事に祖国に帰れるのか…!
クリストファー・ノーラン待望の新作は、初の実話、初の戦争映画、そして(150分超えが当たり前だった近年では)異例の106分という短い上映時間。
事前情報だけでこれまでとは違う雰囲気が漂っていたけど、どう考えても心臓に悪そうな音響と強制的に戦争に参加させられてるような体験型の映像、そして異なる時制と視点が入り乱れる構成は、これまでのノーラン作品と同じく革新的な内容だ。
脳裏に焼き付くダンケルク海岸の光景も相まって、誰もがノーランに期待した「全く新しい戦争映画」というハードルを確実に超えてきたのはさすがの一言。
ただ個人的に欠点を挙げさせてもらうならただひとつ。
おもしろくないんだ、これが。戦場、全然おもしろくない。
兵士たちからしたら敵の攻撃に怯えながら助けを待つしかないんだし、観客は映画的なエピソードを極力排した事実を淡々と見せられるんだからまぁそれはおもしろくなるはずないですよね。だけどその「おもしろくなさ」が「マジの戦争体験映画」という革新性と切っても切れないのがこの映画の罪なところだ。
「戦争はおもしろくない」なんてこれまでハリウッドの人たちは誰も教えてくれなかった。メル・ギブソンなんかあんなに楽しそうにやってたのに…。
CGを極力避けるため、兵士の絵を描いた看板を立てて数を水増ししたりしてとにかく実際にあるものだけを撮ってるそうだけど、そのせいか画面になんとなくスカスカ感がある。
ボクは(もちろん)実際の戦場を知らないので、ノーランに「戦場ってこんな感じだよ」と言われれば「そうなんですね」としか言いようがないんだけど、今まで観た“画になる”戦争映画で培われた常識とどっちが本当なんだろう。
そんななかでたま〜にほっこりエピソードが給水所的に配置されてるのもニクい。
劇中の兵士たちがわずかな食パンと紅茶で命を繋いだように、観客もかすかに希望を感じさせるエピソードを骨までしゃぶるようにして過酷な戦場体験をなんとか乗り切らなければならない。
そうなると上映時間が短いのもノーランの配慮だと思いたい。こんなの150分も観れないですよ、ホント。
観た後で無性にパンを紅茶で流し込みたくなってパン屋へ駆け込んだ。でも食パンにジャムをかけただけのやつはちょっと…ここ戦場じゃないんで…すいません。
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
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