こいつにはラジオの才能がある『リクエストをよろしく』

ラジオ、聴きますか?
最近はネットラジオやPodcastの普及もあり、一時期よりは聞く人口も増えたんじゃないかな?と思います。
むしろ派手ではないけどちょっとまた流行ってる感じすらある気がする。気のせいですかね。
特に去年は旬なタレントさんが一日だけパーソナリティを務めたり、そのことがニュースになることも多かった気がします。

そんな2015年、ラジオを題材にした漫画が立て続けに刊行されました。
書店で大きめに取り上げられたのが『波よ聞いてくれ』。

沙村広明/講談社

無限の住人が無事完結した沙村広明先生の新作ということもあり、ヒットしました。

が、今回このコラムで取り上げるのはこちら。
『リクエストをよろしく』

ラジオを題材にした漫画は当然他にもあるんですが、個人的にはこの2作がほぼ同時期に出たのが印象的でした。
(…と思って調べたら波よ〜が5月、リクエストを〜が10月だったんで全然同時期じゃなかった…)

先週の「ピアノのムシ」とはうってかわって、今回の主人公は気持ちのいいバカです(作中でそう言われている)。
売れない芸人の主人公は、ある日いきなり元相方から呼び出され、ひょんなことからラジオ番組に出演することになります。
何故彼が抜擢されたのかはおそらく徐々に明らかになりますが、その一つが前述した「気持ちのいいバカ」にあることは間違いないでしょう。

この主人公、冒頭からすでにラジオを聞く人として描かれているんですよね。
ラジオの音で目が覚めて、ラジオの電池残量を気にしながら、ラジオの会話に突っ込みを入れる。
全く関わりのないところから知らない世界に飛び込む話は多いけど、彼は“まさか自分がその中に入るとは思ってもいないけどすぐ近くにいた”。
そこも面白さの一つかもしれない。

ラジオの魅力って何でしょう?
人柄が出るとか、自分に語りかけている気がするとか。
私は魅力の一つに、「密やかさ」があるんじゃないかなと思います。
その音や声に耳を傾けていると、少しだけ閉じられた世界のような気がする。今ここに1人でいてもダメじゃないんだと思える。

そんな閉じられた世界に浸る人々を受け入れるのが、作中曰く“開けっ広げ”な主人公。
ただ、今のところはリスナー云々よりラジオ局という世界の人間関係やその仕組み・成り立ちから話が進んでいきそうな気配。

まだ1巻しか出ておらず、お話も序盤なのでこれからどうなるかわからないけれど、ラジオをそこそこ聞く人間としては見守りたい作品です。
ラジオを聞く方もそうでない方も、是非読んでみてください。そしてラジオを聞きましょう。

S__23601216-1
ちなみに著者の『関根君の恋』(完結済)は言わずと知れた超名作ですね。こちらも是非。

やまなか(仮)
貯蓄もないのに漫画をジャケ買いしては一喜一憂しているどうしようもない人間。
狭く浅く生きています。