ズバリ、最初に申し上げますと、この漫画のテーマは不倫です。
主人公(30代女性・既婚)が学生時代の初恋の相手と同窓会で出会う、テンプレのようなところから物語はスタートします。
昼ドラみたい。
でも、これが、昼ドラよりも怖い!!!!
肯定も否定もせずに、静かに事の行く末を見つめて震える。
『あなたのことはそれほど』
なんて秀逸なタイトルなんでしょう。
これは誰が誰に対して思っていることなのか…それがすぐにわかるようなわかりやすい作品ではないのです。むしろ読み進めるほど、『???』となること請け合い!
でも読みづらいとかそういうことではありません。精神的な混乱という意味での『???』です。
不倫がどうか、という話はさておき、作中、主人公たちが不倫することで周りにもたらされる影響が当然いくつかあるんですけど、まあびっくりするほど誰も幸せになっていない。
いや、主人公はある意味幸せなのか…。旦那さんにバレる前(と本人は思っている)の浮かれ具合なんか、もう見てられないです。おばか。
恋して浮かれちゃう気持ちはわかる。わかるけど。
それにしたってこの旦那、カンがいいですよね。
笑顔が怖い!なんだったら最初からずっとちょっと怖い!
でもこの人は何も悪くない。サイコっぽく描写されてるけど、彼は全くサイコパスではないし、悪いことは一切していないし、あくまでもこの二人の結婚生活において、悪いのは(というか馬鹿なのは)この主人公の方です。
それでもなんだか薄気味悪く見えてしまう悲しきピエロ。家族だとしても、他人の携帯なんて見ても絶対にいいことはない。
愛とは美しいものばかりではないのだナァ~。
対照的に、不倫相手の奥さんは、ずっとクレバーなまま描かれています。
こういう女性が一番強いよー!こうなりたいけど無理だよー!
こんな女性ばっかりだったらすごいけどそれはそれで怖い。そして誰しもこんな女性に憧れるわけじゃない、だからこそ、というところもあるわけですね。
しかし、そういう意味では、この男(不倫相手)はある意味見る目があると言える。やっていることはおろかだけど。
この不倫相手の男もま~曲者なんですけど、おかげで不倫をする男性のメンタルはとってもよくわかります。まるで危機回避マニュアルのような”不倫をする男性メンタル描写”の秀逸さ。
男の人ってこういうところあるよね。最終的に女性にはあまりないドライな感じ。そこに憧れたりしないわけでもないけどこいつは、こいつには、一回超絶に痛い目にあってほしい!!
不倫がどうとか、そういうことをどうこう言うつもりは一切ないですが、この作品を読んでいると、よく言われる言葉がとてもよく沁みる。
『最後に傷つくのは女の子なんだから』
でもこの主人公においては、おそらくそんな自分に酔っているフシがあるので、多分あんまり効き目がない言葉。
だって傷ついた方がドラマティックだし。
ただ、こんなことは漫画の登場人物だから言えることであって、実際にこの世界に存在する全ての女性にあわよくば幸せになってもらいたい、というより不幸になってほしくない。
「自分を大切にする」とはどういうことか、今一度考えてみたくなるような作品です。
飲み物が合図って、モテる人の思いつくことは大体ちょっとおっかないですね。
貯蓄もないのに漫画をジャケ買いしては一喜一憂しているどうしようもない人間。
狭く浅く生きています。