布団を捨て、会社に行こう『大人スキップ』

何千年も昔から言われていますが、やはり春といえば『眠い』です。
まあ暑い日も寒い日も365日ずっと眠いですけど。
ずっと寝ていたい。お布団から出たくない。と思ったことがない人なんていないんじゃないですかね?修行僧の方とかは別として。
一般的にはそんなことはできません。起きて支度をし、学校や会社に行かなければいけない。それがなくても、ひとまず体を起こしてお布団から出なければいけない。健康的に生きている人間であれば。

でもある日突然、半永久に寝てしまったとしたら?

松田洋子/KADOKAWA
『大人スキップ』

ある日目覚めたら14歳だったはずの私は40歳になっていた!
親もいなくなり、勉強も恋もせず、社会経験もゼロのまま40歳の大人として社会に放り出されたら?
というお話。

これ、完全にホラーですよ。
まあ作品のトーンとしてはコメディ寄りではあるんですが、よく考えなくても怖すぎる。
誰もグロテスクな死を見せず、人間でないものは出て来ず、未知の力に襲われることは一切ないのに、めちゃくちゃ怖い。
14歳のアタシが、起きたら40歳。最低限の英文法と、二次方程式と、古文の知識があるかないか。もしかしたら冒頭の漢詩だってギリギリわからないかもしれない。
女子高生になって超モテモテになりたーい!今の感覚を持ったまま人生やり直したーい!けど勉強や受験・各種試験や就職活動は二度としたくなーい!と常日頃都合のいいことばっかり考えてる私も背筋を正さざるを得ない。

眠ることになったきっかけが本当に些細なことなのも怖いんですよ!
その後彼女を襲うあれやこれやも軽めのタッチだし、かなりの俯瞰視点から描かれているせいか、あんまり切迫感はないし、コメディな匂いも漂わせているからヘラヘラ読めますが、このきっかけの事故(?)の『こんなことで!?』感。これは私たちの日常でも十二分にあり得るだけに、今後かなり慎重に生活しなければいけないんじゃないかとビクビクです。石橋叩きすぎて割れてしまうんじゃないか。

最後のコマも希望があるんだか絶望なんだかよくわからないし、とにかくこれは衝撃作です。
人によっては爆笑だし、また別の人によっては何よりも怖い話でしょう。
四の五の言わずに1巻だけでも読んでみてください。朝目覚めることの素晴らしさを知ることでしょう。


自分同窓会してみたいな。

やまなか(仮)
貯蓄もないのに漫画をジャケ買いしては一喜一憂しているどうしようもない人間。
狭く浅く生きています。