『一緒に掘り下げていける贅沢な経験』

舞台『ライ王のテラス』の役どころを教えてください。

今回、私はごく普通の町娘の役です。
吉沢亮さん演じる寺院の建設に携わる若棟梁の恋人で、彼を支える役目の、発想力のある女の子です。

舞台は初挑戦ですが、楽しいところや大変なところはありますか。

演出の宮本亜門さんや、恋人役の吉沢さんと一緒に、自分の役についてじっくり掘り下げられるのがとても楽しい!
ここまで時間を使って演出家や共演者の方とじっくり台詞から役のことを読み取って深く考えるという経験がないので、贅沢です。
大変なところは…長い台詞も多いので、自分の気持ちの乗せかたや伝え方が難しいなと感じています。
声の出し方をまだ掴みきれていなくて、稽古の中で改善していけるように、試行錯誤しているところです。

顔合わせや稽古場の雰囲気はどうでしたか?

最初から集中力のすごい稽古でした。
みなさん、本読みの時から既に感情が入って、怒鳴ったり涙を流したり。ただただ圧倒されました。
特に初日は影響を受けすぎて、体力も精神力も使い果たしたのか、夜はすぐに眠ってしまいました(笑)。

『独特な表現を楽しんでもらいたい』

舞台に対して抱いていたイメージと、実際のギャップはありましたか?

舞台は好きでよく見るんですが、最初はやはり「(普通のお芝居より)大げさなのかな?」というイメージがありました。
声の大きさや、動きなど、日常よりも普通じゃなく演じているのかなって。
でも、それは気持ちの高まりなど理由がきちんとあるからで、その理由をきちんと自分の中で見つけていけば、違和感は感じなくなる、と教えていただき、なるほどと納得しました。

学生時代に原作者の三島由紀夫を研究されていたことは活きていますか?

はい!大いに!
三島由紀夫さんが何を美しいと感じる方なのか学んでいたので、今作の『ライ王のテラス』も、きっとこんなことを伝えたいんだろうという自分なりの解釈はあります。
その上で、自分の役はどういった立ち位置なんだろう?どういう人物なんだろう?ということは想像しやすかったです。
ただ、そこをお芝居に活かすのはまた別の技量なので、とてもやりがいがあります。

研究した観点からこの作品の見どころがあれば是非教えてください。

私たちの普段の生活ではまず使うことのない表現がポンポン出てきます。
例えば…病気の症状で腕が赤くなることに対して『薔薇の花びらのような兆し』とか。
ちょっとヘンテコな表現で、でもそれこそが三島由紀夫だなと思います。
舞台全体はもちろん、そういう独特の表現も是非楽しんでいただきたいです。

『リラックスすることが大切』

天然とよく言われてらっしゃいますが、ご自身ではどうですか。

天然じゃないと思ってるんですけど、コミュニケーション能力はもっと磨きたいです!
皆さんから見たら、おっとりして見えるんでしょうね。自分ではもっとシャキシャキしたいとも思うんですけど、中々できなくて。
母がとてもおっとりした人なので、その影響は大きいのかな。

自分なりのポリシーはありますか。

緊張しやすい性格なので、リラックスすることが一番大切だなと思います。
リラックスするためには、皆さんと仲良くなったり、自分が楽しめることだったり、あと笑顔を忘れないように意識しています。

憧れの俳優さんはいらっしゃいますか?

今回主演の鈴木亮平さんが本当に素敵な方で、とても憧れます!
お芝居への情熱はもちろん、その真剣なまなざしや、かと思えば話しかけやすい柔らかい佇まいで、知識も豊富で…。こういう大人になりたいなと思いました。
自分がいつか先輩になった時に、同じように親しみやすいと思ってもらいたいですね。
仕事の時以外でも、人として存在が綺麗な女性でありたいです。

『自分にしかなれない自分になりたい』

20代になって意識は変わりましたか?

変わりました!自分の中で「これからは大人になるんだ」と自覚しました。
物事に対して真剣に向き合おう、という気持ちが芽生えました。
でも実は、無邪気な部分も大事かなと思っていて、大人になることに抵抗もあります(笑)。穢れたくないというか…。
していただくメイクなんかもどんどん大人になってると気づいて、「大人になったなぁ」と少しだけ寂しく思ったりします。

Instagramでは、とても自然体な方だなという印象を受けます。

自分の中で、あまり格好つけることが楽しめなくて…(笑)。
もちろん、時々はバシっと決めますよ!(笑)
でも自然体の方が見ていただくのも楽しんでもらえるんじゃないかと思っているので、自分らしい写真をあげるようにしています。

今後の目標を教えてください。

自分にしかなれない自分になりたいので、毎日を無駄のないようにしていきたい。
それが目標です。

大野いと プロフィール
1995年7月2日生まれ、福岡県出身。
2011年、主演映画『高校デビュー』で女優デビュー。その後も多数の作品に出演。
現在、TBS『ダメな私に恋してください』丹野綾役で出演。2016年公開予定の映画『雨にゆれる女』ではヒロインを務める。
今回の舞台『ライ王のテラス』で、舞台初出演となる。


舞台『ライ王のテラス』
実在したカンボジア最強の王、ジャヤ・ヴァルマン七世がアンコール・トムを造営してゆく雄大な愛とロマンを描いた作品。
主演は、今最も注目の俳優・鈴木亮平。そして演出は国内外で高く評価されている宮本亜門氏。
その他俳優陣には、ヒロインの第二王妃役に倉科カナ、第一王妃役に中村 中、石工のちに若棟梁役に吉沢 亮、村娘役に初舞台となる大野いと、宰相役に神保悟志、そして王太后役には鳳蘭。
2016年3月4日(金)~3月17日(木)、赤坂ACTシアターにて。

撮影:大村祐里子
衣装:SOMARTA