『役はなるべき人がなるんだと思いました』

NHK連続テレビ小説『あさが来た』で千代役に抜擢された時のお気持ちは。

私もヒロインのオーディションを受けていて、最終選考まで残っていたのですが、合格できなくて。
その後ヒロイン・あさが波瑠さんだと知り、『なんてピッタリなんだろう!』と思いました。役は、なるべき人がなるんだなって。
その後、あさの娘・千代役としてお話をいただいたときは、とても嬉しかったです。

台詞回し等、最初は苦労されたのでは?

そうなんです!私は大阪出身だからある程度は大丈夫だろうと思っていたんですが、やはり現代と明治時代だと言葉が違うので…。
また、現代の大阪弁はTVなどメディアの影響で少し標準語のイントネーションが混ざっているらしいんですね。
なので自分ではしっかり大阪弁を話しているつもりでも、実は標準語だったということも多いです。

やはり、今回の現場はご自身にとって特別な環境ですか。

今までドラマの現場でリハーサルがある作品に参加したことがなかったんですが、「あさが来た」では毎回しっかりリハーサルがあります。
そこで監督や共演者の皆さんと話し合いをして撮影に挑むので、今ではリハーサルがないと不安に感じることもあるくらいです。
現場に入るときは気持ちをつくることに集中できますし、皆さんが私の意見をきちんと聞いてくださるので、とても恵まれた現場です。

『女の子が思春期に抱く気持ち』

ご自身と千代役で、共通点や違いはありますか?

千代ちゃんは自分のお母ちゃん(あさ)に対して、小さい頃から甘えたいけど素直になれないところがあって、とても共感しちゃいます。それって女の子は誰しもが思春期に必ず抱く気持ちだなって。
ただ、私自身は反抗期がほとんどなく、母とはずっと仲良しなので、千代ちゃんの幼少期のお芝居を見て、そこから自分が演じる千代ちゃんへ気持ちを持っていきました。

小芝さんご自身は、お母さまと仲良しなんですね。

はい!母は、ずっと私の味方でいてくれるんです。私と一緒に喜んで、一緒に怒って、一緒に悲しんでくれて…。
一番近くで、ずっと支えてくれている大切な存在です。
フィギュアスケートをやっていた時も一緒に戦ってくれていたので、戦友のような関係でもあります。
最近では、私も自分の意見をきちんとした言葉で伝えることができるようになってきたので、自分の考えや将来のことなど、よく話し合いをします。

『全ての仕事を同じ熱量で』

これまで一番印象に残ったお仕事はなんですか。

どのお仕事もそれぞれ勉強になったのですが、中でも、去年の舞台で得たものはとても多かったです。
経験豊富な諸先輩方の作品・役に対する思いを間近で見て、『役に向き合うってこういうことなんだ!』と凄く刺激を受けました。自分はまだまだ甘かったと実感しました。
舞台は1つの作品に対して1か月前後稽古をして、ドラマや映画は一つのシーンが短いけれど、かける熱量は同じ。
数秒のシーンでも、1ヶ月の稽古と同じくらいの濃度でやらなければ、一つの役にはなれないんだと気づきました。

毎回意識が変わっていく実感がありますか?

沢山の先輩方とご一緒させていただいていると、どんどん自分の気持ちも変わっていくのがわかります。
周りから見たら変化はないかもしれないですが…自分の中で、すごく変わったような気がしていて。
3月には高校を卒業し、4月から社会人になるので、この1年は色んな方のお話しを聞いて、もっと視野を広げていきたいです。

将来なりたい女優像は。

満島ひかりさんや安藤サクラさんのような、演技派の女優さんになりたいです。
お二人の様にリアルな人間の感情を表現できる女優になりたいので、精進しています。

『少しずつ楽しめるようになってきました』

最近ハマっていることはなんですか。

刺繍です!
『あさが来た』の現場で宮﨑あおいさんが刺繍をされているのを見て、メッチャかわいい!と思って、始めました。私も今まで編み物をしていたのですが、宮﨑さんに自分で編んだものを見ていただいたところ、すごく褒めてくださって…!
刺繍の事をお聞きしていると、宮﨑さんから刺繍の基本セットを頂いたんです。しかも宮﨑さんが刺繍をしたバッグに入れていただいて!本当にうれしかったです。
次お会いする時に是非見ていただきたくて、今頑張って作っています。

お芝居やお仕事をする上で大切にしていることやポリシーはありますか?

「話を聞くこと」を意識しています。
自分で色々役作りをして現場に行っても現場で監督と意見が違うことはよくありますが、その時にきちんと相手の話を聞くことができないと、すぐに演技をシフトすることができないなって。
お芝居でも、会話のキャッチボールをするために、相手の台詞をよく聞くようにしています。
少しずつではありますが、今はそのキャッチボールを楽しめるようになってきたなと思います。もっと磨いていきたいな。

オフの日はどう過ごしますか。

撮影中は、『オフになったらあれこれするぞ!』って思うんですけど、いざお休みになると何もする気が起きなくなっちゃうんです(笑)。お家でのんびりしちゃいがちで…。
でもあんまりのんびりしすぎもダメだなと思って、最近では小説を読んだり、刺繍をしたりしています。

『何気ないことが全部素敵な思い出』

もう高校卒業ですね。学校生活はどうでしたか?

中学2年生からこの世界に入って、修学旅行や体育祭などはほとんどお仕事で参加できなかったので、学生時代の思い出はお勉強がメインです。
高校の修学旅行がハワイだったんです!だけど行けなくて…。
でも、お仕事を頂けるのはありがたいことなので、割り切るようにしていました。
そのぶん、普段の友達との会話や学校帰りにお茶したことなど、何気ないことが全部素敵な思い出です。

4月からの新年度、挑戦してみたいことなどありますか。

今年の抱負が『ご縁を大切に』なんです。
作品に関われることも、その関係者の方々とご一緒できることも、全てご縁なので、大切にしたいですね。
元々人見知りであまり積極的に出かけることがなかったのですが、最近はこの世界で少しずつ増えてきたお友達ご飯を食べに行ったりすることが楽しみで、大切な時間になってきています。
もっとフットワークを軽くして、人と関わっていきたいです。

小芝風花 プロフィール
1997年4月16日生まれ、大阪府出身。
2011年『ガールズオーディション2011』でグランプリを受賞。2012年のドラマ『息もできない』で女優デビュー。
2014年に公開された『魔女の宅急便』のキキ役が話題になり、翌年の第57回ブルーリボン賞新人賞を受賞。
主な出演作は、ドラマ『スケート靴の約束』(2013)、『セカンド・ラブ』 『HEAT』(2015)などがある。
3月15日に自身初となる写真集が発売予定で、3月20日には福屋書店新宿サブナード店にて発売イベントが行われる。

NHK 連続テレビ小説『あさが来た』
幕末から、明治、大正と激動の時代の大阪を明るく元気に駆け抜けたヒロイン・あさと陽気に妻を支え続けたボンボン夫の新次郎。時代に先駆け、銀行、生保を設立し、後には日本最初の女子大学設立に尽力した実在の人物・広岡浅子をモデルに「お金儲け」のためではなく、「今より少しでもみんなが幸せになれる世の中の実現」のために奔走したヒロイン。その「おもろい夫婦」の“びっくりぽん”な物語。

撮影:大村祐里子
ヘアメイク:小坂沙織
衣装:坂井清美