『一気に緊張が走りました』

『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』の台本を初めて読んだ時の率直な感想は。

「これは何なんだろう!?」って思いました。ドラマ?だよね?みたいな。確かに台詞や動きは書いてあるんですけど、でも何かが違うというか…。
一気に緊張が走りました。ああ、これをやるんだなって。

どこまでがリアルでどこからがフィクションなんですか?

性格は、役としての設定があります。そこはフェイクです。ただ、役の中に生きている私は本物です。
ほとんどアドリブなので、出てきた言葉は私が産み出したものが多いんです。でもそれが私自身が考えたことかと言われると、また違う。説明が難しいですね(笑)。
ドラマが進んでいけばいくほど、「これは本心かも」と思うような言動が増えていきます。

フェイクドキュメンタリーはやはり普通のお芝居とは違いますか?

全然違います!勿論とても面白いし、すごく楽しかったんですけど、責任が全然違いました。いつも役をもらって一生懸命演じるわけですが、今回はそこに「一緒に作っている」という感覚が乗ってくるんですよね。全員が舵を取っていたので。例えば私がふざけて暴走しちゃったらそのまま転がっていってしまう。
相棒が松岡茉優で本当によかったなと思いました。

『ふとしたときにどちらかわからなくなった』

松岡さんとのコンビは安定しているイメージがあります。

もう5年の付き合いになります。最初はオーディションで一緒になって、その後共演することが増えて。仲良くなったのは映画「悪の教典」で、がっつりお芝居をしたのはNHKプレミアムドラマ『人生は“サイテーおやじ”から教わった~漫画家・西原理恵子』でした。
プライベートでも会うようになって、結構仲良くなってきたぞ、と思っていたら『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』の話が来て、これは覚悟がいるぞと思いました。

伊藤沙莉さんの、女優としてのおこだわりは?

役によって、発言や現場での立ち振る舞いに気をつけています。
普段は役を引きずったりすることはほぼありませんが、今回は例外でした。家でふとした時に「あれ?どっちだ?」って役か本当の自分かわからなくなったりしました。

伊藤沙莉さんのおこだわりは?

海外ドラマのグリーが大好きです!この曲はシーズン何の何話のどのシーンだとか、こういう気持ちの時は何話のあのシーンを見よう!とか細かく言えるくらい。
あともっと単純なことだと、テレビや音楽の音量が5の倍数じゃないとムズムズします(笑)。

『すぐにその役に染まることができる』

特に近年は本当に色んな作品に出られてますが、最も印象的だったのは?

最近だと、「トランジットガールズ」ですね。
今まではいじめっ子やコメディリリーフが多かったんですけど、トランジットガールズで初めてピュアな等身大の女の子を演じました。さらにそこに同性愛の要素があって。今までの経験とは全然違うし、振る舞いや言葉を1番気をつけていたかも。
いつもは想像できる役…例えば学校でこんな人いるなとか、そういう自分の想定内の役でしたが、これは自分の知らない世界でした。作品の雰囲気はゆったり見えるけど、意外と一番体当たりだったかも。

ご自分の長所はどこですか。

そうでありたいという願望と、そうなってきてるかもという実感がありますが、透明感と言う意味ではなく、透明でありたいです。
自分的にステレオタイプの役を抜け出したことで広がった気がします。
アピールするとしたら、そういうところですね。

素の伊藤沙莉さんはどういう人ですか。

私、究極のイエスマンなんです。断ることが一番苦手なんです。断れないし、自分の意見をスパッと言えない…。
あと友達から相談されることが多いです。そのときは聞き役に徹するようにしています。

『「私はこの仕事が好き」』

このお仕事を続けようと本格的に確信したのはいつですか?

実は、だいぶ遅いんですけど、映画「悪の教典」です。
あの作品が初めての全国公開規模の映画出演で、試写とかじゃなくて、家族と地元の映画館に普通に見に行ったんです。
大きいスクリーンでエンドロールにある自分の名前を見た時、『ああ、もうやめられない』と。
それまでもずっとお芝居をやっていたかったし、やめる気もなかったんですけど、改めて「もう逃げられない。私はこの仕事が好き」って思いました。

7月公開予定の主演映画『全員、片想い/MY NICKNAME is BUTATCHI』の見所を教えてください。

幼馴染に片思いをする女の子のお話です。すごく不器用で、相手に何一つ本当のことを伝えられないんです。
見た方は全員彼女のことを好きになっちゃうと思います。私も自分で演じたけど、見ていて「頑張れ!」って思いましたもん(笑)。
切ないし、キュンとするし、幸せな気持ちになる映画です。

今後挑戦してみたいことを教えてください。

お芝居だと、主題歌で、サザンオールスターズの歌が流れるような感じの作品がやりたいです!ちょっと妖しくてシブい感じ!
そういう世界観の中で、『この人何考えてるんだろう、次は何をしでかすんだろう』というミステリアスな役で、大人の妖しさに挑戦してみたいです。
プライベートだと、海外旅行に行ったことがないので、まずパスポートを取得して、日本から飛び出してみたいな。ずっとロンドンに行きたいと思っています。
お仕事で行くのもアリですね!ゆるい旅番組とか、ゆるいラジオとかもやりたいです。

伊藤沙莉 SAIRI ITO プロフィール
ドラマ「14ヶ月~妻が子供に還っていく」で子供に戻ってしまった大人という難役を演じ、話題になる。以降、生まれ持った芝居のセンスでシリアスもコメディもこなす、希有な存在として数々の作品に出演。近年の主な出演作はドラマ「みんな!エスパーだよ!」、「GTO」、「REPLAY&DESTROY」、「怪盗山猫」、映画「幕が上がる」、「家族ごっこ 高橋マニア」など。
7月には主演映画『全員、片想い/MY NICKNAME is BUTATCHI』 が公開される。

©『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』製作委員会
『その「おこだわり」、私にもくれよ!!!』
清野とおるのコミック『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』を題材にしたフェイクドキュメンタリードラマ。新バラエティー番組『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』のMCを任された松岡茉優(松岡茉優)が、友人の伊藤沙莉(伊藤沙莉)と共に、他人にはなかなか理解できないけれど、本人は幸せになれるこだわりをもった人=「おこだわり人(びと)」を取材し、その姿を明らかにしていく。
テレビ東京ほか 毎週金曜深夜0時52分~

撮影:大村祐里子
ヘアメイク:岡澤愛子