『早く何者かになりたかった』

デビューのきっかけを教えてください。

映画に出たいと思って、自分で履歴書を送りました。
私、思い込みが激しいので(笑)、バレリーナになるんだと思ってずっとバレエをやってきたのですが、それがなくなって…。
早く何者かにならなきゃという意識がずっとありました。その頃映画にも興味を持ち始めて。それで「映画に出たい!」と思う様になりました。

影響を受けた作品はありますか?

一つに絞ることは難しいのですが、中高生のときに沢山見た、若い女の子が出てくる作品たちすべてですね。
自分と同い年の女の子たちがこんな衝撃的な作品を作る一員として加わっているんだ!と羨ましくなって…
それが、女優になったきっかけです。

『門脇麦』という人は、どういう人間ですか?

うーん…私あんまり自分のことよくわからないんです。
強いなとも思うし、弱いなとも思うし、子供な部分もありますが「腹黒い大人になっちゃったな…」と思うこともある(笑)。
常にいろんな自分がいます。

『昔から好きなものがずっと好き』

オフの日はどういう風に過ごしますか?

朝起きて、ヨガ行って、映画見て、本読んで、DVD見て、ヨガ行って、寝ます(笑)。
すぐヨガに行っちゃいますね。ヨガは最早生活の一部になっています。
そのおかげなのか、感情のコントロールがだいぶ上手くなりました。
感情が顔に出やすいのですが、少しずつ出さないよう調整できるようになったと思います。

最近ハマっているものはありますか。

私、あんまり何かにハマることがないんです。昔から好きなものをずっと好きなタイプ。
音楽も映画も、新しいものに飛びつくよりは、ずっと好きなものに満足しちゃってる。
今何かに手を出す余裕があまりないというのもあるかも。

『役だと割り切ることができない現場』

映画『二重生活』の主人公・珠と門脇さんご自身での共通点はありますか?

全くない訳ではないですが、私とは似ていない部分も多かったです。
珠は、自分が傷つかないようにいっぱい鎧を着て、自分のリアルな感情にも蓋をして、麻痺して、自分がそういう状況に陥っていることにも気づいていない。
もちろん誰しもが持っていると一面だと思うんですけど、私自身は割と行動派なので、この撮影中はとても苦しかったです。
いつもモヤモヤして、ずっと『早くこのモヤモヤから脱出したい』と思っていました。

役作りは苦労されましたか?

この作品では、『お芝居した』という感覚が全くなかったです。
私は一度現場に入るとアドレナリンが出続けるんですけど、役の感情を自分の感情が混ざることはないんですね。例えば悲しいシーンの後に家で悲しくなるということはない。
役の感情と自分の感情は別のものだから。
ただ、今回は撮り方がドキュメンタリータッチということもあって、オンとオフがわからなくなりました。永遠と続いている感覚。『これは役だ』と割り切ることができない現場でした。

尾行したことはありますか?

この作品に入るときに「1回くらい経験しておこう」と思って(笑)、喫茶店で隣になった方をちょっとだけ尾行しました。
やっぱりスリルがあります。背徳感というか、いけないことしてる感じになりますね。

『自分のすべてを持ち込んだ』

岸監督作品に参加した感想を教えてください。

段取りやテストがほぼなく、いきなりカメラを回して撮影開始ということが多かったので、自分のすべてを持ち込みました。
ドキュメンタリーがベースにある岸監督の演出方法は、自分にとても合っていました。抵抗などは全くなかったです。
映画監督って頭の中に画があって、それを撮るために色々な段取りがあると思うんですけど、岸さんは画じゃなくてもっと立体的なもの…「空気」を撮る感じ。編集も画ではなくて空気で繋がってる気がしました。

演出で印象的だったことは?

どの現場でもそうなんですが、私、自分が演技しているって自覚すると恥ずかしくなっちゃうんです。
でも、例えば会話のシーンで、本当に会話すれば、それは演技しているというところから少し逃げられる。なのでいつもそこを目指してやっています。
今回は、その目指している部分がベースで、そこから積み上げていける現場だったので、「私がやりたいことを拾ってくれた!」と強く感じました。
岸監督の演出が新しいとか斬新というよりは、今まで自分の中にあるそういう目指す部分をみんなと共有できている!と思って、とても嬉しかったです。

『等身大で演じたい』

挑戦的な作品に数多く出られている印象がありますが、ご自身ではどうですか?

確かにそう言われることは多いですが、自分ではあんまり意識したことはないです。
役に関して言えば、側から見れば行動や作品がエッジが効いているかもしれないけど、彼女自身はあくまでも何処にでもいるような普通の女の子。私がやる役は、そういう「女の子の叫び」が多い気がします。
いつも彼女たちを等身大で演じられたらと意識してやっています。

女優としての転機はいつ頃、どういうものですか?

注目してもらうきっかけは、やはり『愛の渦』ですね。
今はあの作品が自分で超えなきゃいけない大きな壁になっていますが、その高い壁を作れたこと、高い場所を見れたことはとても恵まれてるなと思います。

将来、やってみたい仕事や役などあれば教えてください。

いっぱいあります!
王道のラブストーリーをやったことがないので挑戦してみたいですし、割と体が動くと思うのでアクションもやってみたい。声優も興味あります。
先日見た映画『キャロル』がとても素敵だったので、ああいうガールズムービーもいつかやってみたいです。

門脇麦 プロフィール
1992年8月10日生まれ。
2011年にデビュー後、東京ガスのCM「ガスの仮面」でクラシックバレエを披露し注目を集める。ヒロイン役に抜擢された「愛の渦」では大胆な濡れ場に挑戦し、大きな話題を呼んだ。
主な出演作に、NHK連続テレビ小説「まれ」、映画「闇金ウシジマくん Part2」、「シャンティデイズ 365日、幸せな呼吸」、「太陽」。
日本テレビ「お迎えデス。」に出演中。今後は、Netflixオリジナルドラマ「火花」(6月3日配信予定)が控えている。

©2015「二重生活」フィルムパートナーズ
映画『二重生活』
大学院の哲学科に通う珠(門脇麦)は、修士論文の準備を進めていた。担当の篠原教授(リリー・フランキー)は、ひとりの対象を追いかけて生活や行動を記録する“哲学的尾行”の実践を持ちかける。
同棲中の彼(菅田将暉)にも相談できず、尾行に対して迷いを感じる珠は、ある日、資料を探して立ち寄った書店で、マンションの隣の一軒家に住む石坂(長谷川博己)の姿を目にする。
こうして珠の「尾行する」日々が始まった。

撮影:大村祐里子
スタイリスト:佐伯 敦子
ヘアメイク:石川 奈緒記