『感じたことが答え』
最初に映画『パンとバスと2度目のハツコイ』の脚本を読んだ感想を教えてください。
脚本と一緒に監督の過去作も見せていただいたんですが、どの作品もすごく不思議な世界観で、かつ、何か心に残るものがありました。監督ワールドとでも言うべき独特な世界観が面白くて、素直にこの作品に出たいと思いましたね。
この作品の前に『HIGH&LOW』に出演して、真逆の世界の作品だったので、自分がそこに飛び込みたいなと思ったんです。
今回のたもつ役は、どういう人物ですか?
タモツは、人間臭くて、ピュアでまっすぐで、抜けてるところもあって、お茶目なヤツです。そういう面は、自分と近いものがあります。
たもつを演じるにあたって、めちゃくちゃ共感できる部分と全くわからない部分が真っ二つになりました(笑)。なので役作りはちょっと苦労しましたね。
現場ごとに監督と相談して、たもつという人間を作り上げていきました。
共感できなかった部分とは?
具体的に言うと、別れた奥さんをまだ好きでいる気持ち、僕には全くわかりません!(笑)
結構ひどい目に遭ってるはずで、大嫌いになってもおかしくないのになと。いい人すぎるのか、たもつが自分に言い聞かせているのか、僕にはまだわかりません。でもそこは見た方がそれぞれ感じるところで、それが答えなんじゃないかなと思います。色々考えさせられる作品です。
あと、たもつは、ふみの部屋にもすんなり自然に入れちゃうんですよ。僕自身は「こんなにすんなり入っていいのか?」と戸惑いましたけど、そこはそういう演出だったので。幼馴染パワーもあるのか、たもつの性格なのか…。
『眉の動きさえ意識して』
たもつを演じる上で意識したことを教えてください。
たもつでいる間は、全くカッコつけず、服や髪型も極力削ぎ落としてナチュラルに演じようと意識しました。
声のボリュームや目力や眉の動き一つでも変わってくるので、とにかくリラックスして挑みました。
最初は多少の不安はありましたが、監督から好評だったので、そのまま演じました。
3枚目の演技や間がとても素敵ですが、演じる上で参考にしたものなどありますか?
僕自身、関西出身で、元々コントとかお笑いが大好きなんですよ!テレビではずっと何かしらお笑いに触れているし、土曜のお昼はよしもと新喜劇を見て…バラエティに育ててもらいました(笑)。学校でも常にお笑いの話題が中心でしたね。間や笑いに関してはそこで育てられたのかなと思います。
芝居とアーティストとしてのパフォーマンスと、相互作用はありますか。
めちゃくちゃあります!演技を経験することで、パフォーマンスの表現や感情が豊かになります。
ダンスって視覚で伝えるもので、歌詞を台詞だと考えて、どう増幅させるかが大事だと思うんですね。僕らの目標としては、パフォーマンスが付くことで歌詞や曲に深みを出そうと意識しているので、役者をやって表現力がより向上したと思います。
役作りはしっかりしていくタイプだと思うので、その過程で俳優モードにスイッチが切り替わりますね。
『その心情は描かない』
今泉監督の演出で印象に残ったことはありますか。
普段の自分でいる時からとにかくカッコつけないで、と言われました。自分では全く意識してないんですけど、どこか力が入ってたのかもしれませんね。
たもつは抜けてるように見えるけど、普通の男なら揺らぐ状況でも揺らがないし、しかもその心情を描くわけでもない。だからこそ、実は芯のあるヤツということだけは忘れないで、でも力を抜いて演じてほしいと。
すると、撮影期間中はいつもと少し雰囲気の違う山下さんだったとか?
そうですね!撮影中ももちろん並行して三代目J Soul Brothersの活動はあるので、そこでリラックスしすぎると支障が出ちゃいますから(笑)、切り替えはしっかりしなきゃと気をつけました。
メンバーと一緒にいるときは三代目として・アーティストとしてきちんと絵になるように行動して、この撮影に向かう時は、シーンで追わずに、作品全体を改めて読み直していました。
現場に向かいながら、三代目JSBの山下健二郎からたもつに切り替わっていった感じです。
女優としての深川麻衣さんの印象を教えてください。
グループで活動されていた時の深川さんのイメージと全く違って、びっくりしました。
彼女は本当にポジティブで、ネガティブなことを一切言わないんです。いい子ってこういう子のことなんだ!と思うくらいでした。
今までのアイドルとしての自分をどう自覚されてるのかはわからないけど、この撮影現場では女優としての輝きがすごくて、ただただ関心しました。仕事に対しての熱量もすごかったです。
『感覚を覚えておきたい』
役として表現することの面白さはありますか?
あります!むしろ、そこにヤミツキになってる自分もいます。
普段の自分だったら絶対言わないような台詞や行動などの疑似体験が、役に入り込むと自然と出てくるんです。その感覚が怖いと思う瞬間もあります(笑)。でもそこから今まで自覚してなかった自分の一面に気付けたりします。
最近は喜怒哀楽が動いた時の感覚を覚えておくようにしようと思ってます。こう言っちゃうとイヤラシイですけどね(笑)。爆笑したり、映画見て泣いたりした時に、この感覚を覚えておこう!って。
たもつを演じて気づいた、ご自身の新しい一面はありますか?
たもつは、考えているようで、漏れ出た一言はモロに感情のような気がして、実は意外とピュアだなと思いました。「わかんない」とか「だって好きなんだもん」とか(笑)。そんなところが今の自分にすごく刺さったんですよ。
考えすぎると、“考えたな”ってばれちゃう。周りの目ばかりを気にしていると最終的に自分の殻に閉じこもることになってしまう。僕らの仕事はインプットしたことをアウトプット=表現することなので、たもつを演じてみて、素直さを学ぶことができました。
今後役者としての希望や目標を教えてください。
役者は、自分がやらせてもらえる限り、これからもどんどん続けていきたいです!
今のところは、面白いことが好きなので、三枚目がしっくりくるなとは思ってますが(笑)、カメレオン俳優というか…二枚目も三枚目もきっちりこなせるようになりたいですね。
時代劇や、サスペンスのミステリアスな役とか、悪役とか、色々挑戦してみたい!
今回の映画『パンとバスと2度目のハツコイ』ではこういう役・こういう表情もできるんだ!と思ってもらえたら、僕の勝ちです(笑)。普段の自分とは違う顔を見せることができたと思うので、是非見ていただきたいです。
山下健二郎 プロフィール
2010年、劇団EXILE JUNCTION#1「NIGHT BALLET」に出演。劇中の振付も担当し、演技とパフォーマンスの両面で高評価を得る。同年9月、三代目 J Soul Brothers にパフォーマーとして加入し、11月「Best Friend’s Girl」でデビュー。
2016年10月、Amazon プライムビデオ連続ドラマ「福家堂本舗 -KYOTO LOVE STORY-」に出演。2017年3月、dTV「Love or Not」にて初主演を果たす。
現在ではパフォーマー以外にも役者としての活動のほか、ラジオやイベントのMCを務めるなど、活動の幅を広げている。
映画『パンとバスと2度目のハツコイ』 http://www.pan-bus.com/
昨年乃木坂46を卒業した深川麻衣が映画初出演にして初主演を務め、三代目 J Soul Brothersのパフォーマーとして活動する山下健二郎と共演する映画『パンとバスと2度目のハツコイ』が2018年2月17日(土)より全国公開いたします。個性的でありながら共感を生むキャラクター描写と独特の空気感を持つ映像で表現された本作は、恋愛映画の旗手として注目を集める今泉力哉が描く完全オリジナルストーリー。独自の結婚感を持った“恋愛こじらせ女子”の主人公・ふみと、偶然再開した初恋相手・たもつが織りなす、コミカルでちょっと切ない、新しい恋愛群像劇が誕生しました。
撮影:大村祐里子