シャマランの”絶対に笑ってはいけない映画館94分”「ヴィジット」

あらすじ:気の毒な孫たちが狂ったじいさんばあさんと過ごす最悪の一週間。

☆☆☆☆☆星5つ(もしくは☆星1つ)

全世界に衝撃を与えた「シックス・センス」から早16年…。
その間にさまざまな珍作を生み出しては映画業界に怒られ続けてきたM・ナイト・シャマランがとびっきりの低予算映画で帰ってきた!
いや~なんかそのへんの大学生の卒業制作とかかと思いましたよ、シャマランさん。おかえりなさい!

しっかり者の姉べッカ(オリビア・デヨング)とラッパー志望のタイラー(エド・オクセンボールド)は家庭の事情で一度も会ったことがない祖父母に招かれてはるばる田舎町まで会いにいく。初めて会う孫たちを温かく迎えるじいさんばあさん。
ベッカはこの旅をドキュメンタリーとして記録しようとカメラを回す(この映像がそのまま映画になるわけですね、安上がり!)。
しばらくはクッキーを焼いたり、近所を案内したりして可愛い孫を全力でもてなす老夫婦の微笑ましい様子が続く。
しかし夜になるとどうも様子がおかしい。奇妙な物音、不吉な絶叫。そしてばあさんは突然鬼ごっこを始め、じいさんは散弾銃を口に突っ込み始める…。

老人たちのこの不気味な行動が何か霊的なものなのか、病気なのか、はたまた痴呆によるものなのか。判断がつきづらい微妙で絶妙な采配にシャマランの手腕が光る。
人を嫌な気持ちにさせる才能だけは一級品だぜ、まったく。

「シックス・センス」以降、どんな内容の映画でも「衝撃のラスト!」と必ずしも正しくない宣伝をされてきたことがこの監督に対する観客の「肩すかし感」を生んできたのは不幸なことだけど、少なくともこの映画には本物の恐怖と衝撃の事実が確かにある。よくできてるんです。
しかしながら悲しいかな、内容が緊迫すればするほどエスカレートする老人たちの奇行が観客を「絶対に笑ってはいけない映画館」に叩き落してしまう。
だってばあさんパンツ履いてな…おっとこれ以上は言えない。

孫たちが体験する恐怖(と笑い)の里帰り。これは超高齢化が叫ばれる現代日本でも決して他人事ではない。
年末年始に向けて帰省する機会も増えるこの季節…あなたのおじいさん、おばあさんは大丈夫ですか。

いや〜今回はまさに「5つ星と1つ星は紙一重」「最低は最高」を地で行く映画だった。シャマラン万歳。

☆…映画館を出た後、ニヤニヤしながら自然と酒場に足が向かってしまう(実話)。終電のことは忘れましょう。
☆☆…誘ったほうも誘われたほうもお互い変な感じになる。その後疎遠になる。
☆☆☆…ほどほどに盛り上がって解散。次のデートに期待。
☆☆☆☆…いい気分で映画館を出る。秋の夜風が気持ちいい。もしかしたらこれがきっかけで恋に発展するかもしれない。
☆☆☆☆☆…映画館を出た後、ニヤニヤしながら自然と酒場に向かってしまう(実話)。明日の仕事は休んじゃいましょう。

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今回は一人で観るのがキツかったので「嫌な映画を観る会」のみなさんにご協力いただきました。一つの映画で6時間語れる熱い(そして暇な)仲間たちに感謝。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
https://twitter.com/odkysyk