あらすじ:人間の都合で捨てられた雑種犬たちが恨みの力で地獄の「101匹わんちゃん」と化す!
☆☆☆(星3つ)
家庭にも学校にも居場所がない少女リリ(ジョーフィア・プショッタ)は飼い犬のハーゲンだけが友達。ある日「雑種犬課税」という謎の法律が施行され、父親はあっさりハーゲンを捨ててしまう。必死に探し回るリリ。しかしハーゲンは裏社会の闘犬業者に捕まってしまう。
心優しいハーゲンが闘争心を養うために暴力を振るわれたり、肉体改造を受ける姿には胸が痛む。
ハーゲンを失い、荒んだ生活から立ち直ろうとするリリや、闘犬としての隠れた才能を開花させるハーゲンの姿を観て、観客は「あ、これはただのワンワンパニック映画じゃないんだ」と思う。随所にこだわりが感じられる画づくりもクールだし、よかった「ゾンビドッグ」とかそういうやつじゃないんだ、と。
でも後半になると「これやっぱりワンワンパニック…いやワンワンホラーだ!」と思い知らされることになる。犬たちがふとしたことから自由を獲得し、恨み骨頂の人間どもに反旗を翻すんだけど、前半で執拗に描かれた人間どもの身勝手さがここで活きてくる。犬たちがわりと陰湿なタチで、一人また一人と犠牲になるB級ホラーの王道パターンを踏襲したやり口がちょっと笑える。このへんのテイストの切り替えはなかなかおもしろい。
「動物たちが徒党を組んで襲ってくる」というストーリーはわりといろんな分野で見かけるし、余韻を残すラストはセンチメンタルに過ぎる部分もあるかもしれない。
でも保健所から連れてきた犬たちを猛特訓して、CGなしであの大疾走シーンを描いた熱量と、飼い犬時代の穏やかな演技から、牙を剥いて人間に襲いかかるハードコアな演技までこなすハーゲンくんの名演が光る一作。
個人的にはそのハーゲンを助ける「賢人」的佇まいのテリア犬にも助演犬優賞をあげたい。
自己紹介のところに「犬が絶対助かる映画が好き」と書いてるわりに最近犬がひどい目に遭う映画をよく観てる気がする。まったく人生ってやつは思い通りにいきませんね。これも映画自体の完成度は高いけど、あくまで「わんわん映画」としての基準に従って星は3つになります。
☆…特に意味もなく犬がひどい目に遭う(「テキサス・スワット」「遊星からの物体X」など)
☆☆…ストーリー上の必要に応じて犬がひどい目に遭う(「忠犬ハチ公」「ジョン・ウィック」など)
☆☆☆…ひどい目に遭った犬がまさかの大活躍(「クージョ」など)
☆☆☆☆…人間はひどい目に遭うけど犬は助かる(「インデペンデンス・デイ」など)
☆☆☆☆☆…いろいろあるけど、犬も人間も最後はハッピー(「ビンゴ」「ベートーベン」など)
「ホワイト・ゴッド」というタイトルはその昔、黒人が神のように振る舞う白人を(皮肉を込めて)そう呼んでたことが由来だそうです。映画では犬と人間の関係ですね。写真はそれとは全然関係ない白ワインと白餃子。
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
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