ありがとう「スター・ウォーズ」(ネタバレあり・前編)『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』

あらすじ:遠い昔、はるか彼方の銀河系で…。

☆☆☆☆☆(星5つ)

公開前からの世間の過剰な「スター・ウォーズ」フィーバーに引き気味だったので、「今週は絶対他の映画の話するぞ!」と思って実際に別の映画について書いてたんだけと、いざ観てみたらもう「スター・ウォーズ」のこと以外何も書きたくなくなってつい原稿を破り捨ててしまった。
引いてる場合じゃない。一部劇場での料金値上げも、粗悪なタイアップ商品の氾濫も全て水に流そうじゃないか。
とても一回では終わりそうにないので初めての前後編です。
筆が滑ってネタバレ要素が出てくるかもしれないので「これから観るぞ!」という方はご注意願います。

今回の「フォースの覚醒」は言わずと知れた「スター・ウォーズ」シリーズ10年ぶりの新作です。
物語の時系列をめぐってちょっと混乱が生じているみたいだけど、細かいことは各自インターネットで確認してほしい。
もしくは周りにいる「スター・ウォーズ」好きのマスターに聞いてみてください。大丈夫、今の時期ファンは誰かに「スター・ウォーズ」のことを話したくて仕方ない飢餓状態なので、とても熱心に(狂気的に)教えてくれるはずです。

さて「フォースの覚醒」。今作の最大の「売り」は新世代の若者たちを主人公にしつつ、30年ぶりに往年のキャラクターたちが物語に帰ってくるところであることは間違いない。さらっと出てくる者もいれば、焦らしまくってからようやく出てくる者もいるけど、これがほぼ総動員。思った以上に帰ってきまくる。これほど惜しげもなく登場するとは思わなかったので懐かしい顔が出てくるたびに動悸が…。
キャラクターだけでなく細かい小道具や乗り物なんかも随所にファンを喜ばせる要素がこれでもかと盛り込まれている。
この点だけとっても監督のJ・J・エイブラムスはきちんと仕事をしたと思う。ていうか自分が観たかったんだよな。わかるよ、J・J。

もうひとつJ・Jに感心したのは映画全体の雰囲気づくり。
「スター・ウォーズ」は“親子二世代に渡る数奇な運命を宇宙規模のスケールで描く壮大な叙事詩”のわりに実は非常に淡々とした映画で、どんな衝撃的な場面でもカメラは常にフラットに事実を映しているのが、どこか記録映像のような独特の世界観を生み出していると個人的には感じていたんだけど、それは今作でも忠実に再現されていたと思う。
EP4「新たなる希望」を大胆に模倣した(と思われる)作りのストーリーと相まって、本当の生みの親であるジョージ・ルーカスが監督した新三部作よりも、よりオリジナルの旧三部作に近い質感だった。これもJ・Jのこだわりの仕事の顕れだと思う。

でも「フォースの覚醒」はそういう単なる過去の再現には終わっていない。続々出てくるレジェンドたちに負けないくらい素晴らしかった新世代の主人公たちのことも伝えておかないといけない。
砂漠の星で孤独に暮らす少女レイ(デイジー・リドリー)、ストーム・トルーパー史上初(たぶん)の脱走兵フィン(ジョン・ボイエガ)、そして若きダークサイド野郎のカイロ・レン(アダム・ドライバー)。この3人を中心に展開するドラマの見応えは想像以上だった。
シリーズ初の女性主人公であるレイにはレイア姫の勇敢さ、ルークの才能、ハン・ソロのワイルドさをミックスしたようなハイブリッドな魅力があるし、脱走兵フィンの“お調子者+ビビりキャラ”は絶妙に鬱陶しくない軽さで新鮮だった。新しいドロイドくんのBB-8も期待以上のかわいさで関連商品が飛ぶように売れること間違いなし。

問題は残る暗黒野郎のカイロ・レンだ。今作で旧三部作におけるダース・ベイダーの役割を担う彼だけど、とにかく短気な性格ですぐ物に当たり散らしたり、情緒不安定で愚痴っぽかったり、なんとなく部下のトルーパーたちからも「レンさんにはまいっちゃうよなぁ」と呆れられてるような雰囲気がある。
そしてそんな彼は今作で「スターウォーズ」シリーズの歴史に、そして世界中のファンの心に大きな傷をもたらすことになる。
これによって彼は後年になって「あいつさえちゃんとしてれば…」と半永久的に責められることにもなりかねない難しい立場に追い込まれたことになる。それは実際に脚本を書いたJ・Jに対しても同じことだ。「お前、なんてことしてくれたんだ」と。

それでもボクは今回の「フォースの覚醒」で起こった一連のドラマを、すでに完成された「スター・ウォーズ」の世界をアップデートしようとするJ・Jの決意の賜物として好意的に解釈したい。だって並大抵の勇気じゃできないですよ、アレは。
もちろんカイロ・レンさんには今後死ぬ気で精進してほしいんだけど。次回はちゃんとやれよ!

おっと気づいたらいつもの倍以上の文字数になってしまった。このあたりで切り上げよう。今回は主によかったところを書いたけど、今作にはそれと同じくらいたくさんの欠点もあるので次回はそのへんをネチネチ取り上げて派手に炎上したい。

☆☆☆☆☆…実際のところ映画館であのロゴと音楽がバーン!と出てきた時点でもう☆5つみたいなところはある。ありがとう、ありがとう…。

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打ち上げにてブリティッシュビールに興味津々のBB-8。本当にかわいい。(この後、劇場で買えるこのBB-8付き特製コップをめぐって同好会の間で血みどろのスター・ウォーズが繰り広げられました。)

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
https://twitter.com/odkysyk