“紳士すぎるくま”改め“不幸すぎるくま”パディ公に幸あれ『パディントン』

あらすじ:はるばるペルーから亡命してきたこぐまがロンドンで辛酸とマーマレードを舐めまくる。

☆☆☆(星3つ)

冒頭から自分の話で恐縮ですが、ボクはくまが好きです。しろくまも好きだし、茶色いくまも好きだし、大きいやつも小さいやつも好きだ。生まれて初めて映画館で観た映画は「子熊物語」だった。
なのでもちろんこの「パディントン」もすごく楽しみだった。

とは言え名作児童文学としての「パディントン」のことはそんなに詳しく知らなくて、普段から物騒な映画ばかり観ている身としてはたまの休息としてハートウォーミングな仕上がりを期待していたし、実際映画はハートがばっちりウォーミングする内容だった。
でもパディトンを襲う受難の数々を目の当たりにするとそれだけではとてもおさめられそうにない。

そもそもロンドン来訪もただ呑気に遊びにきたんだとばっかり思ってたら、実際には住んでいたペルーで大地震に見舞われて住処を失い、ひとりぼっちで密航してきたと知って愕然とした。「親は?」と聞かれると「自分が小さい頃に亡くなりました」と言う。マジかよ。冒頭からハードすぎるだろ。

ロンドンで親切な一家に助けられてからも安住の住処はなかなか見つからず、時には移民として迫害を受け、悪徳剥製業者に命を狙われ…とあらゆる辛酸を舐めつくすパディントンだけど、思えば「子熊物語」も母熊が蜂に襲われて死亡する悲しいくだりから始まったし、現実でもしろくまは地球温暖化の影響により北極の氷が減少して住処を追われている。くまという動物はそういう悲劇性を宿命的に背負っているようなところがある。そこが単純に「かわいい」「かっこいい」では済まされないくまの深い魅力なんだよな。根本には孤独なダークヒーロー的な部分があるっていうかね…。

あれ、なんの話だっけ?

あ、そうそう「パディントン」ですよね。
もちろん映画自体はファミリー映画のお手本のようにできていて明るく楽しめる仕上がりだった。「くまの悲劇性」とかそういう話は忘れてください。
パディントンに振り回される周りの人間たちがみんないいキャラで、彼らの特長をうまく活用した冒険活劇としてもよくできてるし、大人向けに散りばめられた映画オマージュも実に楽しい。

…終わり。

「良質さゆえにあまりコラムにして語ることがない」というろくでもない理由で星3つにしたけど、それはむしろ「三毛別羆事件」のWikipediaを愛読しているような自分に問題があると思うので大丈夫、パディントンは文句なしにかわいかったです。

☆☆☆…機関銃のように連発されるギャグで笑いながらも、頭の片隅には最後までパディントンの生い立ちの悲しさがチラついて離れなかったけど、これも主に観る側の心持ちの問題だろうな。

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様々な獣肉を扱っている某店にもさすがに熊肉はなかったので仕方なく普通に豚と牛を食べて帰った。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
https://twitter.com/odkysyk