筋肉×、暴力×、絶望◎『マギー』

あらすじ:シュワちゃんの愛娘がゾンビ化!筋肉では解決できない問題を前に苦悩するシュワの姿をひたすら見せられる95分間!

☆☆(星2つ)

「アーノルド・シュワルツェネッガー氏がゾンビ映画に初挑戦!」
当然のように我々「シュワルツェネッガー」愛好会としては群がるゾンビ共を相手にショットガンをぶっ放しまくる痛快アクションムービーになるだろうと息巻いていた。
ところが「シュワちゃんの娘がゾンビになるらしい」「なんかわりとマジのやつらしい」と続報が入るにつれてどうも雲行きが怪しくなってきた。

どこにでもいる普通のおじさんウェイド(アーノルド・シュワルツェネッガー)の娘マギー(アビゲイル・プレスリン)が外出中にゾンビに噛まれ、発見された頃には時すでに遅し。徐々に変貌していくその姿を不安がる周囲の声をよそに娘に寄り添い続けるウェイド。でも彼にはどうすることもできない。

「もしも身近な人がゾンビになったら…」という葛藤はゾンビ映画につきものの命題だけど、それだけを95分間かけて描く今作は、先週の「ゾンビスクール!」のような巷で流行りの「明るく楽しいゾンビ映画」とは一線を画した実録路線でやってやろうぜという気概を感じる意欲作だ。
だからこそシュワちゃんも一切の筋肉活動を封印し、どこまでも無力な男という役に果敢にチャレンジしてるし、名作「ゾンビランド」ではゾンビに噛まれたと嘘をついてはしゃいでいたアビゲイル・プレスリンも今度は本当に噛まれて、ゾンビ化進行中および反抗期という複雑な役柄をしっかりと演じている。ただですね…

暗いよ。

志の高さは認めたいし、実際最後までブレずに終末ムードを貫徹させた映画作りは決して悪くないんだけど、じゃあ従来のゾンビ映画が提示できなかった新しい世界がここに開けているかというと残念ながら「身近な人がゾンビになったら=どうにもなりません」という救いようのない結論を再確認させられるだけだった。
斧もライフル銃も持っているのにマジで何もできないシュワちゃんというキャラクターは確かに新鮮かもしれないけど、観ていてつらいものがある。
そのつらさこそがこの映画のキモなんだと思うけど、今作で辛酸を舐めつくした、その結果としてゾンビの殲滅を誓ったシュワちゃんが銃を手に街に飛び出す「マギー2」に期待したい。

☆☆…「アーノルド・シュワルツェネッガーが出演する作品には「I’ll be back」のセリフを入れないといけない」というカリフォルニア州の法律に従って今作でも気の毒な警官がどん底の空気の中で言わされてた。そういう雰囲気じゃなかっただろ。空気を読め。


今回も1人では受け止めきれないと判断し、「嫌な映画を観る会」のみなさんにご協力いただきました。映画館にシュワちゃんのマスクを持参する頼もしい連中です。鑑賞後は無言で解散しました。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
https://twitter.com/odkysyk