非日常へようこそ『ホテルサラマンダー』

宿が好きです。
旅館でも、ホテルでも、ビジネスホテルでも民宿でも。
なんだか自分の家じゃない(友達の家でもない)ところで過ごすのって楽しくありませんか。
それが随所素敵に設定された空間ならなおのこと。

ということで、数多あるホテルが舞台の漫画の中から、今回はこちら。

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『ホテルサラマンダー』

謎のお金持ち・サラマンダー氏が道楽で(?)作った、おそらくどこかの外国の架空のホテル。そこで働く従業員、訪れる客、それをとりまく人々から織りなす色々なお話です。
基本的には従業員が固定キャラで、あとは1話完結で話が進んでいきます。
サラマンダー氏は最後までそのお顔を見せることはありません。

漫画にリアリティを求める度合は作風によってまちまちですが、この作品はそのラインがすごく絶妙…というより変な塩梅で成り立っています。
舞台も支配人も明らかに海外なのに、メイドさんは日本人、支配人は『ハチ公前で待ち合わせ』とか言うし、随所に日本ぽさが漂っている。
ホテルは山の上の湖のほとりにあるんですが、その山を下りると明らかに日本の街があって、地元の中学生が…なんていう話もあるし。

気軽に読める面白さなのでサクサク読み進められるんですけど、はたと気づくと混乱します。
なんだここは。どこなんだここは。そもそも、これは何を伝えたい作品なんだ。楽しいけど何が言いたいんだ。
でもこの作品にそれを求めるのは野暮です。
だってここはホテル。非日常。
なので、細かいところは気にせず、静かな湖畔で賑やかな人々が繰り広げる物語をただ享受すればいい。
出てくるお食事がおいしそう。お部屋の調度品も素敵。ソファの座り心地よさそう!あーいいホテルに行きたいなあ。一週間くらい暮らしてみたいなあ…という具合に。

ちなみに従業員にロボットが出てくるんですけど、彼の❝夢❞がこれまた素晴らしい。
ロボットが一般的に購入可能になり、いつか本当にロボットが従業員になる日も遠くない気がする今日この頃、ロボットの原則(というか人間の特徴)を改めて考えてしまった。

全3巻、すでに完結していますので、気軽に読めるのではないでしょうか。
ちょっとしたお休みの日に、旅行気分で味わえる…かどうかはわかりませんけど。


人生初の海外旅行(仕事)から5年…パスポートがどこにあるかすら忘れてしまいました。

やまなか(仮)
貯蓄もないのに漫画をジャケ買いしては一喜一憂しているどうしようもない人間。
狭く浅く生きています。