☆☆☆(星3つ)
前作「フランシス・ハ」ではふらふらしながらも気づけば人生と向かい合わざるを得なくなってきた微妙な年頃の若者の七転八倒を描いたノア・バームバックが、今度は中年たちに牙をむく。
前作を「若いってのはよぅ…」などと遠くから眺めていたおじさんたちよ、次は自分が餌食になるんだぞ。
停滞気味の記録映画監督のジョシュ(ベン・スティラー)と映画プロデューサーのコーネリア(ナオミワッツ)の夫婦。最近は子供ができて生活が一変した友人夫婦ともイマイチ噛み合わないし、かといって自分たちは今さらそんな所帯じみた生活には馴染めないよね~と思っていたところに、偶然若い夫婦(アダム・ドライバー、アマンダ・セイフリッド)と知り合う。
若い二人のレトロでクリエイティブなライフスタイルに触発されたジョシュはファッションに目覚めてみたり、コーネリアは慣れないヒップホップダンス教室に通ってみたり、徐々にかりそめの若さを取り戻すが…。
最近はボクの周りでも似たような話をよく聞くので、胸が痛むシーンが多かった。
仲のいい友達同士だったのに、例えば片方が結婚したり、子どもを持ったりしてライフスタイルや人生観が変化すると、様々な理由からお互いに「自分の人生の正しさ」を強調するようになり、いつしか疎遠に…という例のパターンだ。
そんな時に今まで所属していたコミュニティとは全く異なる交友が生まれると、思いがけずのめり込んでしまったりしてね。
この映画ではそういう変化を誇張した形で描いているけど、実際似たようなパターンに遭遇する機会の多い30代のボクとしては「うーむ」とうなってしまう。
かといってこの映画はそんな危うい中年(実際には誰しもに当てはまると思う)の姿を描きつつ、それをただ叩きのめすだけの残虐な映画じゃない。人間関係はそんなに一面的じゃないし、一歩立ち止まって考えてみるとお互いの事情も理解できるかもしれない。
偏狭な我々は大人になりきれない中年夫婦を指差して「イタい」と笑ったり、突っ走る若者に「そんなの今だけだよ」とろくでもない説法をしてしまうけど、本当に必要なのはそういうことじゃないんだよ、と優しく教えてくれる映画であり、映画に出てくる40代と20代に挟まれた30代にこそ観てほしい一本。そして迫り来るクライシスに備えましょう。
☆☆☆…よく言えば意外な展開、悪く言えばちょっと余計な要素が多いんだけど、悲哀と笑いがほどよいリアルさで楽しめる佳作。
ロンドンで食べたニューヨークポークチョップパイ。マッシュポテトにフライドポテトをぶつけるという発想こそがNYスタイル。ニューヨーカーは何考えて生きてるんだ。
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
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