冷やそうぜ、肝。あげようぜ、電気代。『ライト/オフ』

☆☆☆☆(星4つ)

笑えて楽しいおばけ映画「ゴーストバスターズ」の次は、笑えないし、心臓がひたすら痛くなるおばけ映画「ライト/オフ」のおでましです。
観た者は日常の「電気を消す」というなんでもない動作に恐怖心を刷り込まれ、生活に支障をきたすことまちがいなしの新機軸ホラー映画。いやはや最近のこの業界は本当に熱い。

暗闇になると現れる謎のお友達と毎晩お話しちゃう系お母さんとの暮らしに疲れ果てた気の毒なマーティンくん(ガブリエル・へイトマン)は離れて暮らす姉のレベッカ(テリーサ・パーマー)に助けを求める。かわいい弟を助けるべくレベッカが調べてみると、お母さんが子どもの頃にうっかり入院していた精神病院でマブダチだったというダイアナという謎の女の子の存在が…。

もし自分が幼い息子だとして夜な夜な暗い部屋でお母さんがぶつぶつ独り言を言ってるのを見かけたり、久しぶりの休日に母子家庭なのに「今日は”3人で”ゆっくりしましょう」などと言われたらそれはさぞかしきついだろうと思う。映画の前半はとにかくこういういや~な雰囲気がひたすら続くので主に精神にクるものがある。

Youtubeに投稿された3分足らずの短編動画が基になっている今作。アイデア一発だった原作から付け加えられたストーリー的な肉付けがすごく秀逸で、このあたりはオーソドックスなホラー演出が得意なジェームズ・ワンのプロデュース手腕が光るところ。
なぜ暗闇にしか現れないのか、どう戦えばいいのかがはっきりしてるので、一見暗闇では無双状態のダイアナちゃんに身近なアイテムを使って対抗するギンギンのバトル演出と、前半の暗くじめ〜っとした空気感とのメリハリもいい。
人間たちが身を守るためにつけっぱなしにした電気をいちいち消して回るダイアナちゃんを見て「(説明がないけど)やっぱり霊的なパワーとかあるんだろうな」と無理やり納得しかけたところで、iPhoneのライトで身を守ろうとしたお兄さんのiPhoneを思いっきり踏み潰してて笑っちゃう。人力だったのかよ。

電気を消すといる、電気を消すと消える…単純に電気のスイッチをパチパチ押すシーンだけで観る者を震え上がらせた原作のインパクトを損なうことなく、飽きずに楽しめる長編恐怖映画に仕上がっております。本当は「光と闇の芸術である映画を〜」みたいないい感じの〆をしたかったけど、そんな大層なものじゃないのでやめました。

☆☆☆☆…映画館で上映が終わった後で電気がつくまでやたら時間がかかったの、あれは絶対わざとだと思う。客で遊ぶのはやめろ!


恐怖映画の後は血のようになって赤いパスタ、その名も「絶望」に限る。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
https://twitter.com/odkysyk