本当の戦争の話をしよう『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』

☆☆☆(星3つ)

あけましておめでとうございます。
新年一発目は「スター・ウォーズ」サーガ初の実写スピンオフ作品です。まぁ正確には30年くらい前に「イウォーク・アドベンチャー」っていうスピンオフがあったんだけど、もうこの際そのことは忘れてください。二度とろくでもないイウォークの話をするんじゃないぞ。

はるか昔、平和な銀河共和国は悪の皇帝パルパティーンによって銀河帝国へと変貌。正義の騎士ジェダイは滅び、その期待の星アナキン・スカイウォーカーはダース・ベイダーに変わり果てしまった。そんな暗黒時代にルーク・スカイウォーカーという才能ある若者が現れ、立派なジェダイとなって宇宙に平和をもたらす…という「スター・ウォーズ」の大筋はみなさん大丈夫ですよね?
で、その暗黒時代真っ只中から始まる最初の映画「スター・ウォーズ エピソードⅣ」冒頭の「大量破壊兵器デス・スターの設計図を帝国から盗み出すために反乱軍に多くの犠牲が出ました」というたった一行のセリフから生まれたのが今回の「ローグ・ワン」になるわけなんですね。そういえばそんなこと言ってたなぁ。

ジェダイが滅びた時代が舞台なので、みんな大好きライトセイバーやフォースの力なんかはほとんど登場しない。出てくるのは抑圧に抗うどこまでも普通の人たちだけ。
自分の力で運命を切り開いていった「スター・ウォーズ」の主人公たちと違い、運命に否応なく流されていった名もなき者たちの戦いが描かれる今作の魅力は、なんといっても「スター・ウォーズ」史上ダントツの「ウォーズ感」。これに尽きる。

繰り返しになるけど、ここにはライトセーバーでレーザーを弾いたり、フォースの力で相手の心を操れるような超人は一切登場しない。銃で撃たれれば死ぬし、フォースは誰にも味方しない。敵も味方もバタバタと死んでいく。手りゅう弾で吹っ飛ぶ反乱軍、木の棒でシバかれるストーム・トルーパーの姿にはまさに戦場のリアルがある。あると思う。それはどこか演武めいた華麗な戦いが主だったこれまでの「スター・ウォーズ」にはなかった生々しさだ。
特にドニー・イェン演じるチアルートの「棒きれでトルーパーをシバキまくる」という最高の芸風は「スター・ウォーズ」サーガに確実に新風を送り込んでいる。それがいいか悪いかはさておき、あんなの絶対笑いますよ。

最初は正直「スピンオフなんか作ってる場合かよ、本編に集中しろよ」と思ってたけど、観終わった今ではなぜこの作品が作られたのか完全に理解できる。
いいスピンオフってのは本編にぶら下がって小銭を稼ぐのではなく、元の世界そのものをグッと広げてくれるものなんだなぁと、いや、感動しました。
これを観た後、あなたは必ずもう一度「スター・ウォーズ」が観たくなる。ボクが保証します。

☆☆☆…映画単体ではアレでも本編との相乗効果が凄まじい。つくづく映画ってのは星の数なんかでは測れないですね。


酉年は最高。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
https://twitter.com/odkysyk