☆☆☆☆(星4つ)
「昼は会計士、夜は殺し屋」「主演はベン・アフレック」という情報を見聞きした限りではよくあるアクション映画だろうとしか思わず、「まぁDVDが出たら観るかな…」くらいの期待値だった今作。しかしながら監督が傑作「ウォーリアー」のギャヴィン・オコナー、さらには「ベン・アフレック演じる殺し屋会計士は自閉症」という設定を知って、たまらず映画館に観に行ってしまった。「ゴーン・ガール」でのあの無表情っぷり、そして「バットマンvsスーパーマン」での話が通じない狂人ヒーローっぷりを経て、過剰な筋肉と虚脱系演技の融合というよく分からない特色を獲得したベンアフならではの役柄が楽しみだった。
小さな会計事務所を経営するクリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)は市民の借金問題など細々とした案件をさばく傍らで、世界中の大物の資金洗浄を担当する闇のコンサルタントであり、面倒事を解決する殺し屋であり、さらには一度始めた仕事は最後までやり遂げないと気が済まない高機能自閉症でもあったのだ。
ある企業から社内の不正を探る依頼を受けたクリスチャンはもちまえの異様な根気強さで不正の根本を発見するも、そのために命を狙われる羽目に…。
「アウトロー」「ジョン・ウィック」「イコライザー」など諸問題をあくまで個人の暴力で解決するタイプの映画は昨今多いけど、今作の特徴はなんといってもベンアフの見事な自閉症っぷりだ。しかもそれが味付け程度の設定に留まらないのがいい。
少し会話は噛み合わないものの、貧しい老夫婦にも親切に対応する会計士としての仕事っぷり、執拗にヘッドショットでとどめを刺すスタイルとインドネシアの格闘技「シラット」をベースにした戦闘術で暴れまわる殺し屋としての仕事っぷり、そしてそれらと同じくらいの尺と熱量で描かれるクリスチャンの一風変わった自閉的生活、という三位一体の魅力がこの映画にはある。
また「ウォーリアー」でも兄弟の絆を熱く描いたギャヴィン・オコナーは今回も一風変わった兄弟および家族模様をぶち込んできて、そのせいで肝心の悪役とか事件の真相とかのくだりがかなりないがしろにされるんだけど、その感じが一つのことに集中すると他がおろそかになるクリスチャンの特徴を表してるようでおもしろい。
映画全体がクリスチャンならびにベンアフが醸し出す不思議な空気に支配されていて、特にクライマックスの脱力感は個人的には強く支持したい。いくらでも続編ができそうだし、これはぜひシリーズ化してほしい。
☆☆☆☆…ベンアフのことばっかり書いちゃったけど、伏線の回収も見事で気持ちよかった。
ベンアフのような筋肉にはステーキが一番。今年もタンパク質をたくさん摂りたくなる映画だった。
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
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