マーベル最狂のサイケドラッグムービー誕生『ドクター・ストレンジ』

☆☆☆☆(星4つ)

高いクオリティを維持して拡張を続けるマーベル宇宙への新入りは医者からヒーローに転身した、しかも科学の力に頼らず代わりに魔術を操るという変わり種(まぁ変わってるやつしかいないんだけど…)。これまでのヒーローにはない不思議な力を駆使して、マーベルの常識を覆す超ド級にサイケなドラッグムービーに仕上がっております。
最近マーベルの新作が出るたびに言ってる気がするけど、今回こそいろいろ大丈夫なのかマーベル!(大丈夫でした)

天才的な手術の腕前と最悪の性格でおなじみの外科医スティーブン・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)は不幸な交通事故で腕の機能を失い、すっかり自暴自棄に。どうにかして医者としての再起を目指す彼はいろいろあってチベットの謎の寺院にたどり着く。そこで彼は治療の代償として魔術の先生エンシャント・ワン(ティルダ・スウィンドン)に弟子入りすることに…。

アメリカ軍による肉体改造で生まれたキャプテンアメリカ、最先端のパワードスーツをこれでもかと使うアイアンマンなどこれまでは化学の恩恵に授かるタイプが多かったけど、今回は魔術。空間は曲げるわ、時間は戻すわ…まぁ〜やりたい放題ですわ。
視覚効果ありきでストーリーが決まったんじゃないかというくらいに激しく画面が歪み、極彩色のトリップ映像が繰り返される様子はもはやエンタメを通り越して完全にドラッグムービー。職人の腕自慢は分かったからもう勘弁してください。はいはいすごいすごい。

でもこの映画で感心したのはそんなストレンジ氏と同じく己の腕前を誇示してくるようなCG映像でなく、その斬新なオチのつけかただ。
ヒーロー映画の長い歴史の中で悪の倒し方も様々なパターンが出てきて、最近はオチに既視感があるものも増えてきた。その点「ドクター・ストレンジ」はヒーロー映画にあるまじきサイケまっしぐらな精神で予想もしなかった風呂敷のたたみ方をしてくれる。
これには超人をいたずらに量産するだけでなく、それぞれにきちんと意味と個性を持たせて送り出すマーベルの矜持を感じた。その点DCコミックスは…おっとこの話はやめよう。

ヒーロー映画のトレンドを先導しつつ、様々な形でその枠を壊そうともしてきたマーベル。王道をフォローしながらも一切置きにいかない姿勢は今回も鮮やかだった。
「ヒーローはなぜダサいマントをつけるのか問題」に正面から立ち向かってたのも◯。

☆☆☆☆…でもそろそろ普通のティルダ・スウィントン様が観たい。スキンヘッド、声出しNG、ババァ、クソババァと続いたもので…。


誕生日祝いに食べた葉山牛のステーキ、時空が歪むほどおいしかった。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
https://twitter.com/odkysyk