☆☆☆(星3つ)
現代社会から離れ、広大な森で自給自足の暮らしを送るキャッシュ一家。一家の長である父ベン(ヴィゴ・モーテンセン)とその子どもたちのもとに都会の病院で療養中の母が亡くなったという報せが届く。そして一家は葬儀のため、森を出てはるかな都会を目指すことに。
超自然派お父さんとコーラもハンバーガーもクリスマスさえも知らない子どもたちは亡き母の最後の願いを叶えられるのか…!
「現代社会から離れ~」と言われるといわゆるヒッピー的な生活を思い浮かべるけど、このキャッシュ家のみなさんの社会からの離れ方はハンパではない。
時折下界で自作の工芸品を売ったり、銀行に行ったりしているベンはまだしも、厳しい訓練(山をひたすら走る、崖をひたすら登る…etc)と独自の教育(本をひたすら読む)を受けた子どもたちは外界から遮断された生活を送っていて、強靭な肉体と膨大な知識を身に付けている一方で、コーラやハンバーガーはおろかキリスト教も知らないという徹底っぷり。
クリスマスの代わりにキャッシュ家ではノーム・チョムスキーの生誕を祝う記念日が勝手に開催されていたりして、そんな一家の常識・非常識と逆転は観ていて楽しいし、野山を駆け回ったり、炎を囲んでみんなで楽器を演奏したりする生活の描写はいきいきとしていてたまらなく魅力的だ。
かといって俗なものを必要以上に否定的に描くこともしないのがこの映画の徳の高いところともいえる。まぁコーラは「毒の水」と言われてたし、都会のキッズは典型的なゲーム中毒だったけど、まぁ多少のことは大目に見ようじゃないか。
なので映画も「自然派がセコい都会派をギャフンと言わせる!」みたいな内容になっているかと思いきやそう一筋縄ではいかない。なにしろはじめは独自の教育方針を貫いていたベンも物語が進むにつれ迷い、ブレまくることになるし、子どもたちも外界に触れることで自らの境遇について考えるようになる。
父に反発する者もいれば、外の世界に飛び出そうとする者もいる。この価値観のゆらぎが物語に温かみを与えているんですよね。ただの「クロコダイル・ダンディー」じゃないぞ、と。
ボクも家庭を持ったら勝手に記念日を作ったりしたい。
☆☆☆…Guns N’ Rosesの「Sweet Child O’ Mine」の素朴な家族カバーをはじめ音楽もすごくいいです。
映画の内容的にも鑑賞後はなんとなく野菜を食べざるをえない雰囲気だ。まずい。
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
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