俺らが近未来『ゴースト・イン・ザ・シェル』

☆☆☆(星3つ)

正直に告白すると、エンタメ義務教育を満足に修了していないので、原作の「攻殻機動隊」シリーズを見たことがないような、映画に対する思い入れもへったくれもあったもんじゃない状態で観たんだけど、90年代のSFアクション映画を揺りかごにきて育ったボクのような者からすると非常に懐かしい気持ちになる作品だった。

舞台は2070年。不幸な事故で脳以外の全身を失うも全身の義体化手術に成功し、奇跡的に生還したミラ=少佐(スカーレット・ヨハンソン)はその後、電脳テロ犯罪を取り締まる公安9課に配属され、その能力を駆使して大活躍する。その義体化手術を開発したハンカ・ロボティクス社を狙ったテロ事件の捜査を進めていくうちに、自らの過去に秘められた謎が明らかになったりして…。

「ブレードランナー」でおなじみの疑似アジア的な街並み、「ロボコップ」でおなじみのサイボーグ化した人間の葛藤、「マトリックス」でおなじみの(時代から大した進歩のない)スタイリッシュなアクション、そして数多のB級SF映画がひとつ覚え的に持っていたやたらと暗い未来観…どれも「おかえりなさい!」と叫びだしたくなるようなエッセンスばかりでつい目頭が熱くなってしまう。
一昔前の人にとって兎追いしかの山や小鮒釣りしかの川がそうだったように、画面の中の薄汚い路地裏、非人道的な研究にまい進する悪徳企業、ビルに躍るよく意味のわからない漢字のネオンこそがボクらの世代の原風景なのだ。2017年にもなってそんなものが大画面で展開されたらどうしたってグッときちゃうんですよ。すいませんねぇ。

記憶がテーマ、近未来SF、ビートたけし、と並ぶとついキアヌ・リーヴスの「JM」を思い出すけど、あの手のとんでも映画が平気で出回っていたような時代はとう過ぎ去り、今作ももちろん問題のないレベルに仕上がっている。いると思う。
原作ファンの人がどう思うかは分からないけど、なんとなく取っつきにくいイメージのあった原作から少佐の内面にのみフォーカスしたことで話もわかりやすくなり、スカヨハ様のガタイの良さもサイボーグだと思えば気にならない。
多脚戦車(蜘蛛みたいな形でガトリングガンをぶっ放す)とか完全に「ロボコップ」で観たことあるデザインだったけど、すごくよかったですよ。いや、ホント。

個人的には肩を持ちたくなるけど、これを「どこかで観たような表現の寄せ集め」と取るか「過去の名作のいいところ大集合」と取るかは判断の分かれるところだろうなぁ。でもなぁ。

☆☆☆…ビートたけし氏もなにを言ってるか全然分からなかったけど、かっこよかったです。


そんなシーン全然ないんだけど、無性に汚い中華料理屋に行きたくなったので名店「珉亭」のピンクチャーハン

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
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