今回は犬は大丈夫『ジョン・ウィック:チャプター2』

☆☆(星2つ)

飼い犬を殺されたキアヌ・リーヴスがブチキレる例のやつの続編。
前作のコラムを読んでみると「あらすじ:キアヌ・リーヴスが殺す」と書いてあってひどいなと思う反面、今回もそれ以外に特に言いようがなかった。

前作のお話の肝といえばやはり「愛犬のために復讐」というところだったと思うんだけど、どうやら製作サイドは「ジョン・ウィック=復讐」で押し切ることに決めたようだ。
確かにシリーズ化するにあたって毎回犬を殺してると各種愛護団体も黙っていない気がするので難しいだろうとは思う。なので今回犠牲になるのは「家」です。
愛する妻との思い出がたんまり詰まった家がなんだかよくわからないけど、とにかく派手に爆破される。ミサイルで。おかげでジョン氏は無事ブチギレてお話が転がり始めるんだけど、これがなかなか厳しい。

単純明快だった前作に比べて裏社会のいざこざだの殺し屋同士の義理だのが複雑に絡まって、イマイチなにをやってるのかよく分からない。このあたりは次回作での大きな課題になるだろう。
だいたい今作でジョン氏は家、車、平穏な生活とほとんど全てを失っているので、次はどうやって怒らせるつもりなのか心配になる。もう犬はやめてくださいよね。

と、ストーリー面は今ひとつキレがない今作だけど、メインの見せ場となる「殺し屋大集合」には多少の欠点を補う勢いがある。むしろ勢いしかない。全人口の半分くらいが殺し業に従事してるんじゃないかというくらい全編通して過剰に現れる殺し屋たちと、それを律儀に始末していくジョン・ウィックの戦いは完全にリミッターが外れていておもしろいし、名物の「至近距離からのヘッドショット」に加えて「人ごみの中での静かな撃ち合い」「執拗な車轢かれ芸」など名場面続出で飽きさせない。またストリートミュージシャン、通りがかりのスモウレスラーなど一般市民(?)にまぎれた殺し屋が多数出てくる展開も楽しいし、次はどんなやつが出てくるんだろうとすでに次作が楽しみで仕方ない。

ベトナム帰りの兵士の心の傷を描いた「ランボー」が「ランボー2」で完全に爆発お祭り映画と化したように、「ジョン・ウィック」シリーズも今作で(良くも悪くも)方向性が決まった気がする。
「ジョン・ウィック7」が公開される遠い未来で「今思えば2はひどかったよな」と語り継がれるかもしれないけど、シリーズ化の礎となるであろう分岐点を記憶にとどめておきたい。とか言って3で終わったらごめんなさい。

☆☆…こないだ☆4つと書いたけど、改めて考えると愛すべき「☆2つ映画」の魂が確かにこの映画にはある。


豚肉、ハム、ソーセージをパンで挟んでとろけるチーズとこってりソースをかけて焼くポルトガルの名物カロリー料理「フランセシーニャ」こそ殺し屋てんこ盛りの映画を観た後にふさわしい。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
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