横一列全員泣いてました『僕のワンダフル・ライフ』

【あらすじ】
野良ゴールデンレトリバーのベイリーは熱中症で死にかけてるところを通りがかりの少年イーサンに助けられる。そしてそのまま幸せな家庭の飼い犬という最高のポジションをゲットするも、哀しいかな犬の寿命は人間よりはるかに短く、ベイリーは家族を残して一足先に天国に旅立つことに…。
しかし驚異的な執念で見事転生に成功したベイリーはある時は警察犬、ある時は孤独な女性の見守り活動と次々に犬生を全うしながらイーサンとの再会を夢見て生まれ変わり続ける…!

先日、新作「オン・ザ・ミルキーウェイ」(力作!)の公開に合わせて来日したエミール・クストリッツァ監督が、トークセッションで「なぜ要所要所で動物を使うのか?」という質問に「観客は映画で人間が何人死んでも何も思わないが、動物が一匹死ぬだけでめちゃくちゃうろたえる。だからエモーショナルなシーンでは必ず動物を投入するんだ」と語っていた。確かにそういうところはある。
「インデペンデンス・デイ」でもホワイトハウスが吹き飛ぶシーンでは爆笑するだけだけど、ウィル・スミスの飼い犬が間一髪で助かるシーンは手に汗握ったものだ。その理論に基づくとこの映画はとにかく心を動かされっぱなしの実に危険な映画ということになる。

監督のラッセ・ハルストレムは過去に忠犬ハチ公を映画化した「HACHI」でも犬好きの心をえぐった前科があるけど、あれはまだハチ公の一発退場だけで済んだ。でも今回は違う。身を切られるような犬との別れが何度も訪れる。
ベイリーとイーサンはもちろん、生まれ変わるたびに新しい飼い主との絆を丁寧に、そして執拗に描いてから容赦なく退場させる…
名匠の手腕が観客の心を容赦なく削っていくのだ。ハルストレム恐るべし。

救いといえば転生の仕組みを理解したベイリーが2回目以降は「次いってみよう!」的に気軽に生まれ変わってくれることだけど、それでも過去に犬を飼ってた身としてはいろいろ思い出した挙句、「ウチの愛犬は果たして幸せだったんだろうか…」などと映画とは無関係なことで泣けてしまう。泣けてしまうんよ…。

とはいえハルストレムも決して観客の心をえぐり散らして快楽を得るサイコパスじゃないので、もちろん最終的には心温まる仕上がりになってます。
犬好きの同志のみなさん、劇場で過呼吸になるまで泣きましょう。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
https://twitter.com/odkysyk