『そのままタクシーに乗って事務所に』

女優になったきっかけはなんですか?

高校生の時にバリスタを目指していて、学校見学に行く電車の中でフォトグラファーの方に声をかけていただいたんです。
それまで地元からほとんど出ていなかったので、こんなことあるんだとびっくりして「東京は怖い!」と思っちゃいました(笑)。
でも興味がでてその後連絡をし、何度か定期的に写真を撮ってもらっていました。ある時「あなたに合いそうな事務所があるから紹介するね」と言われて、そのままタクシーに乗って向かったのが今の事務所です。

ドラマ『神奈川県厚木市 ランドリー茅ヶ崎』では、どんな役ですか?

舞台となるコインランドリーに何かを洗濯しに来る女子高生です。
自分の高校時代とちょっと似てて、彼女の気持ちがわかりました。いじめられてるわけでもない、嫌なわけじゃないけど、100%楽しいとは言えない、そんな違和感。
でもここのコインランドリーに行って、彼女は勇気をもらえます。ほんわかしているようで、ちょっぴり前向きになれる、そんな温かいお話です。

現場でのエピソードを教えてください。

基本的にずっと長回しで、とっても楽しかったです。
ただ、3話はその女子高生がほとんどしゃべっているシーンだったので、撮影がおしていたり、リハーサルで変更があったり、すごい責任があるぞ!と焦りました(笑)。
でもその緊張感もあったのか、なんと一発OK!嬉しかったです。

『自分一人で背負う必要はない』

今まで一番楽しかったお仕事はなんですか?

どの現場もそれぞれ楽しさが違うのですが、一番現場で笑ったのは、『SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜』です。
基本的にはコント番組なんですが、とても変わった現場でした!「繋がりとかいらないから、とにかく演ってみて」と言われました。「編集でなんとかするから、前後の辻褄は一切考えなくていい」と。演じていてとても楽しかったです。
共演の皆さんが面白いというのはあるんですけど、みなさん本当に自由に楽しんで演じていて、本番以外、監督やスタッフさんたちもみんなゲラゲラ笑ってるんです。私もカットがかかった瞬間に我慢できずに吹き出しちゃったことがよくありました。

今まで一番苦労したお仕事は?

監督や共演者、それぞれの角度からアドバイスをもらったときに、みんなの言うことがバラバラで、「どうすればいいんだろう!?」と混乱したことがあります。
その時は誰に相談していいかもわからなくて、一人で抱え込んだ結果、蕁麻疹が出ました…。
今では色々な人に相談して整理できるようになったので、一人で抱え込むことはなくなりました。

一番自分が変わったなと思うお仕事は?

舞台『気づかいルーシー』では、歌も初めてでしたし、苦手だったモノローグがたくさんあって、ルーシーをしっかり演じなきゃ!と意気込みすぎて、最初は打ち解けられずにダメダメでした。
稽古が進むにつれて、徐々に「作品はみんなで作るものだ」と気づき、それからは色んなことを相談していくようになりました。
それまでは、悩んでも一度持ち帰って一人で考えてから修正してもらっていたんですが、見切り発車でもどんどん相談するようになって。
それは他の現場でもとても活かされています。
一人で何もかも背負い込まないほうがいい、もっと伝えていいんだということを学べた大事な現場でした。

『期待を裏切って攻めていきたい』

印象的な役が多い岸井さんですが、素の岸井ゆきのさんはどういう人ですか。

食べることが大好きです!
あと、長所でもあり、短所でもありますが、すごく頑固だと思います。自分がこうだと思ったら突き進みます。真面目なんですが、その真面目さがズレてるというか。
友達と話していても、一つ気になることがあると先に進まなくて…。

自分と全く違う性格の役のとき、役作りはどういう風にしていますか。

客観的に離れて見るようにしています。空から見るみたいな。
逆にその役と同化しすぎると、性格や考え方の違いがあるせいで雑念や違う意味が生まれてしまうので、自分自身とは切り離すようにします。
なので、「私だったら絶対こんな風に言わないんだけどな…」というような役をもらった時は、かえって楽しいです!「うわーこんなこと言ってる~!」って面白がっています(笑)。

ドラマ『99.9-刑事専門弁護士-』では、どういう役ですか?

自称・シンガーソングライターの役です。
松本さんが演じる深山に片思いしていて、邪険にされてもめげないタフな精神の持ち主です。
緊張感のあるドラマのテーマと専門用語が飛び交う中で、視聴者の方がちょっとした息抜きを感じられる役にしたいな。そして、視聴者の皆様の期待を裏切って攻めていこうと思います。

『俳優部として現場にいる』

近年は映画へのご出演も多いですが、映画ならではの楽しさはありますか。

映画は監督とお話ししたり、お芝居もきちんとリハーサルできて、時間に追われている感覚があまりないです。
こんな風に(芝居を)していいのかな?と思っても、案外OKだったりします。
今までは「私がこんなこと言っても…」ってどこか遠慮してた部分があったんです。でもある時そんな自分に疑問を抱いたんです。照明さんや音声さんがいるのと同じように、私は俳優として現場にいるんだぞ?って。
それまでは自分一人で考えてやるという、ある意味「賭け」に出てる感じだったんですけど、相談すれば、一度乗っかってもらうことができるじゃないですか。巻き込めるというか…。その分、責任も生まれてきますし。
結果的にそのままでよかったり、やっぱり変えたりはありますが、そういうチャレンジが出来るようになったことが、最近とても楽しいです。

舞台もよく出られていますが、舞台の楽しさはいかがでしょうか?

舞台は、反応がダイレクトだから、一番楽しいし、時に傷つきます(笑)。
また、セットが何もなくても、「ここは病院です」と言えば病院になる、そういう無限の空間が素敵だなと思います。
稽古期間も長いので、その間に自分の考えが変わることもあって、現場でのいろんな振る舞い方や考え方は、舞台で新たに発見することが多いです。

“岸井ゆきの”として、どういう女優でありたいと思いますか?

流行り廃りに関係なく、ずっといる女優になりたいです。おばさんになっても、おばあちゃんになっても、根を張っていたいです。

岸井ゆきの プロフィール
1992年2月11日生。2014年に東京ガスのCMに出演し注目を集め、その演技力の高さから年々活躍の場を広げている。
最近の主な出演作は、映画『友だちのパパが好き』(15)、『ピンクとグレー』(16)、『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』(16)、『森山中教習所』(16)、ドラマ「SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜」(15/TX)、「神奈川県厚木市ランドリー茅ヶ崎」(16/MBS・TBS)、「99.9-刑事専門弁護士-」(16/TBS)ほか。

TBS日曜劇場『99.9-刑事専門弁護士-』
個性的な刑事専門弁護士たちが、ぶつかり合いながらも、逆転不可能と思われる刑事事件に挑んでいく、新感覚の痛快リーガル・エンターテイメント。
主演は嵐・松本潤。岸井は、深山(松本潤)が居候する小料理屋の常連客・加奈子役で出演。毎週日曜夜9時放送。

TBS-MBSドラマ『神奈川県厚木市ランドリー茅ヶ崎』
舞台は神奈川県厚木市にある、風変わりなサービス、設備のコインランドリー。
第3話では、凪(松井玲奈)とオーナー(滝藤賢一)は週2回のペースで制服を洗いにくる女子高生の成田弥生(岸井ゆきの)が気になって仕方ない。
監督・脚本はともに飯塚健。MBS/TBSほかにて3月中旬から4週連続放送。

撮影:大村祐里子
ヘアメイク:星野加奈子