仕事はつらいし、人生は苦しいから、空でも飛ぼう「バードピープル」


あらすじ:仕事、家庭、生活…すべてに疲れ果てた男と、退屈な毎日にうんざりの女の子。そこに訪れる突然の停電と不可思議な変化。そして日常の灰色から再び輝きを取り戻すシャルル・ド・ゴール空港とパリの街並み。
http://birdpeople-suzume.com/

☆☆☆☆(星4つ)

「仕事はつらいし、人生は苦しいから、映画でも観よう」という見も蓋もないタイトルで始めたこの連載の第一回にふさわしい作品だった。

多忙のあまり鬱気味のモーレツ社員・ゲイリー(ジョシュ・チャールズ)が仕事で世界中を飛行機で飛び回る姿を見て、「なるほど、それで”バードピープル”ね〜」と納得してたけど、その後でタイトルの本当の意味に気づかされた。「そうきたか…」と。
これは相当な超展開だけど、不思議なことにあまり違和感なく受け入れられる。
もう一人の主人公、ホテルのお掃除係・オドレイ(アナイス・ドゥムースティエ)が平坦な日常から一転して奇妙な世界に羽ばたいてしまうこの突飛な展開は、長時間の通勤、終わらない仕事、果てしない夫婦喧嘩…とそれまで地道に重ねた描写との対比でより鮮やかさを増して見える。
無駄な残業で予定がつぶれるのとかホントまいっちゃいますよね。わかるわかる。

そしてDavid Bowieの名曲「Space Oddity」が流れる中で光り輝き始めるパリの夜景。その美しさに思わず釘づけになる。
パリを描いた映画は数あれど、このシーンはお世辞抜きで格別に素晴らしかった。

ゆるふわに見えて地に足のついた描写と不思議な滋養にあふれたストーリー、美しい風景、そしてスズメの殺人的なかわいさで、心と身体が少しだけ軽くなる作品。
そうだ、仕事を辞めよう。

☆…この衝撃を一刻も早く誰かに伝えたくなる
☆☆…なんだかんだ映画の悪口で盛り上がる
☆☆☆…悪くはないんだけど多分3日後には何も覚えてない
☆☆☆☆…足取りは軽く、頬はゆるみ、暖かい気持ちで映画館を出られる
☆☆☆☆☆…この衝撃を一刻も早く誰かに伝えたくなる

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元気いっぱいの小鳥の姿を見ていたらいつのまにか焼き鳥屋さんに駆け込んでた。思い出横丁は最高。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
https://twitter.com/odkysyk