南米麻薬組織ものの金字塔、ついに誕生『ナルコス』

☆☆☆☆☆(星5つ)

「ストレンジャー・シングス」に続き、海外ドラマ第2弾ということで今回は同じくNetflixで先日シーズン2が公開された「ナルコス」です。
今シーズンも全10話をほぼぶっ通しで見てしまう圧倒的なおもしろさ。
最近のエンターテインメント業界は映画、ドラマ、音楽、ファッション…それぞれがあらゆる分野を横断して相互に影響を与え合いながら発展していて、現代の南米麻薬映画事情とも密接に関係するこの「ナルコス」ももちろん例外ではない。その重層的な文化を追いかけるのがたまらなく楽しいところであり、とにかく疲れるところでもあり…という実に複雑なところだ。
実際ドラマの新シーズンが始めると映画なんて全然観られなくなってしまう。でもやめられない。

前シーズンで、コロンビアの都市メデジンで世界初の麻薬カルテル「メデジン・カルテル」を結成し、巨万の富を得る一方で、政府や商売敵への徹底的な戦争行為であらゆる勢力から追われることになった実在の麻薬王パブロ・エスコバル。
今シーズンではそんな人生の春を謳歌していた彼が徐々に追い詰められ、その王国が崩壊していく様子が血で血を洗う抗争とともに冷徹な視点で描かれる。

前シーズンはエスコバルが一介の”ナルコス(密売人)”から麻薬王にのしあがっていく成り上がりストーリーで、なにかあるとすぐに殺人に走るとんでもないやつなんだけど、それでも腐った社会をタフに生き抜くカタルシスがあった。
善側の主人公であるFBIコンビはその凶行および躍進を見つめるしかなく、その無力感たるや、まさに南米麻薬組織を扱う作品の醍醐味だったわけだけど、今回は一転して攻勢に転じた政府側と追われるエスコバルという逆転した視点が観客をさらなる深淵に叩き落とす。
いつのまにか落ち込むエスコバルに感情移入しちゃうんですよね、これが…。

抗争は激化の一途をたどり、政府もカルテルも重要人物がどんどん消えていく。
善良な若者がたまたまエスコバルのお世話係から側近まで上り詰めていくなかでマジの極道になっていく姿もサイドストーリーとは思えない濃密さだけど、もちろんそんな彼にも運命は容赦なく襲いかかる。
そう、「ナルコス」の世界では子供だろうが女だろうが主人公だろうが少しでもバランスを崩して足元を踏み違えた者は容赦なく退場させられるのだ。そしてこの容赦のなさがまさにコロンビアのリアルそのものなのだ。
と、コロンビアに一度も行ったことがないボクは勝手に断言したい。

衝撃的な終わり方から一転してシーズン続行が発表された「ナルコス」。今のうちにぜひチェックしてください。

☆☆☆☆☆…南米麻薬事情を描いた映像作品では今のところNo.1。「メキシコ 地獄の抗争」も捨てがたいけど。

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人間が容赦なく肉片と化すドラマを見た後は動物の肉片を貪るにかぎる。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
https://twitter.com/odkysyk