マイケル・ベイ意欲作、まさかのビデオスルー!『13時間 ベンガジの秘密の兵士』

☆☆☆☆(星4つ)

俺たちのマイケル・ベイが2012年のリビア・ベンガジで起きた実在の事件「アメリカ在外公館襲撃事件」の映画化に挑む!も、隕石も落ちてこなければ、車がロボットに変身したりもしないので、あろうことか日本では劇場公開されず、DVDスルーになってしまった今作。
前作の「ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金」もDVDスルーだったし、この寂しい状況には胸が痛む。やっぱり大きいスクリーンで観たいですよ、この人の映画は。

カダフィ大佐亡き後、混迷を極めるリビアに派遣された6人のプロ兵士たちはクソ暑い気候や嫌味な上司にも負けずせっせと任務に励んでいた。そこに仕事でたまたま訪れたひとりのアメリカ大使。高まる緊張。そしてベンガジの街を不穏な空気が包む…。

事件の発端はアメリカで作成されたイスラム教を侮辱する内容の映画の一部がYoutubeで公開されたことがきっかけになっているんだけど、この映画ではそのへんの背景の部分は特に重視されていないみたいだ。
「なんだかわからないけど、大量の暴徒に襲われててヤバい」という現地の人たちが実際に感じた不安を表現しているのか、たた単純に戦争に時間を使いたかっただけかは不明。

その甲斐あってか上映時間144分の大部分がドンパチに使われているので、異変が起きてから事態が収束するまでの「13時間」という時間の重みが登場人物にも観客にもズシッとのしかかってくる。疲れるんだ、これが。
また暴徒のみなさんも一晩中攻めてくるわけじゃなくて途中で謎の空白時間を設けてくるので、劇中で兵士たちも「アドレナリンが引いて、いろいろ考えてちゃうんだよな…」と言っているように、現場の疲弊感を追体験できるようになっている。ベイの巧みな手腕が光るところだ(偶然かもしれないけど…)。

戦闘中にかぎってコンタクトが外れたり、完全武装したはずがうっかり短パンのまま出撃しちゃったり、ところどころに「軍人あるある」が散りばめられてて、見た目ではほとんど区別できない(全員屈強+髭+武装なので)軍人諸君の個性を確認できる。この地獄の任務からみんな無事で帰ってほしいと思う。

蜂の巣にされ、フロントガラスは炎上し、タイヤはパンクしながらも逞しく走るSUV、迫撃砲の発射から着弾までをミサイル目線で描くシーンなど、ベイこだわりの戦争演出に、決断の遅い上層部に振り回される現場の人間、というサラリーマン的悲哀もたっぷりに描かれる今作。社会人のみんな、つらい時はベンガジのことを思い出そう。

☆☆☆☆…銃撃戦とバーベキューとサッカー中継が同時に盛り上がる街、ベンガジのことは忘れられそうにない。

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朝霧JAMに行ってきました。豪雨、強風、濃霧の中でのキャンプはまさに軍事訓練だったけど、ベンガジに比べれば天国。迫撃砲も飛んでこないし。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
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