そして今日も肉を食べる『オクジャ/okja』

☆☆☆(星3つ)

アメリカの大企業「ミランド社」が「発見」した大きくて、おいしくて、そして安全なスーパー豚。迫り来る食糧危機を解決する切り札として大注目を浴びる中、ミランダ社は世界中の農家にスーパー豚を送り込み、誰が最も美しく育てられるかを競うコンペを開催する。
そして10年後、韓国の山奥の農家に預けられたokja(オクジャ)は親友のミジャとともにすくすく育つが、そんな一匹と一人にミランド社の魔の手と、あと過激派動物愛護団体の愛の手が迫る…。

いやはや、それにしてもポン・ジュノの新作が公開と同時にNetflixで観られるんだからすごいですね。
もちろんスーパー豚のオクジャくんが暴れ回る姿を劇場の大画面で観たい気持ちはあれど、やはりこのスピーディーさこそ現代!って感じで痛快。と思ったら韓国では劇場公開と同時にネット配信するNetflixの姿勢に怒った映画業界が上映のボイコットをして大騒ぎになってるようだ。世の中なかなかうまくはいかない。

そんな世の中のことについてこれまでも胸糞悪い結末を多数用意してきたポン・ジュノだけに、今回のテーマが「食肉業界」と知った時点でかなり不安だった。
ボクは食肉が大好きだけど、普段その製造過程には完全に目をつぶって生きてるし、「肉食は是が非か」的議論についても「ありがたく、そしておいしくいただく」以外の回答は未だ見つからない。
実際観客は今回も非常にモヤモヤしたものを抱えながら帰途につくことに…おっと違いますね。家で観られるんだから、えーっ、モヤモヤと眠りにつくことになる。

ミランダ社(モーレツ資本主義)vs愛護団体(モーレツ自然主義)の構図を用意しながらどっちに対しても唾を吐きまくる内容で、「なんかやばいおばさん」を演じさせたら並ぶ者のいないティルダ・スウィントン様と「なんかやばい兄ちゃん」を演じさせたら…(以下略)のポール・ダノがクレイジー社長とエコテロリストをそれぞれ熱演するキレッキレの配役が光る。声高に暴力反対を訴えた直後にしくじった仲間をボコボコにするダノは最高の仕事をしてるし、「人口物ダメ絶対!」を信じるあまり栄養失調で使い物にならないテロリストもいい味だしてた。団体をバカにしすぎる。
だいたい劇中に出てくる「AFL」はバリバリに実在してる団体みたいだけど、抗議とか大丈夫なんだろうか。大丈夫なんだろうな。
ぜひ週末にご自宅でお楽しみください。

☆☆☆…劇中の結末は身もふたもないかもしれないけど、めちゃくちゃかっのいいミジャの選択に励まされたのでボクは今日も肉を食べる。


映画の後に焼豚を死ぬほど食べた罪深い我らをお許しください。

おだかやすゆき
昼は会社員/夜も会社員/座右の銘は「狼は生きろ、豚も生きろ」
つらい仕事の合間に楽しい映画を観て感想を書きます。
好きな映画は「人間はガンガン死ぬけど動物と子どもは絶対に助かる」映画。
https://twitter.com/odkysyk