持つ者への憧憬、持たざる者への慕情『神様の横顔』

そもそもこのコーナーを始めようと思ったのは、この作品がきっかけです。

『神様の横顔』

1935年の男子だけの演劇学校を舞台にしたお話。
現在2巻まで出ています。
演劇がテーマということで、どうしてもあの大作がチラついてしまうんですが、それはもう宿命として仕方ないわけで。
でも、これはこれで十分作品として楽しむことができます。

自分の才能に気づかない天才と、誰よりも天才になりたい努力の秀才。
舞台で歴然たる才能の差を見せられ苦しむ。

あー!持つものと持たざる者の静かな戦いってなんでこんなに面白いんでしょうか!
努力したことが到底敵わなかったり、喉から手が出るほどほしいものを易々と目の前でやられたりする。
絶対面白くなるやつ。
秀才に勝ってほしいとも思うし、やはり天才の天才をみせてくれ!やってくれ!とも思う。
自分が何も持たない、かといって努力で這い上がってやる!という執念もない、なんとな~く毎日を過ごしているので、こういうのはとても憧れてしまいますね、どうも。

また、性別が女性から男性になっただけで、人間模様や心情描写とかかなり違いが出るものだなあと改めて気づかされる。
男性だから/女性だから、と一概に言えないけれど、やっぱりそこは違うんですよね。
主人公やライバル、その他先輩後輩先生などなど周囲との関係性も絶妙!
変なチヤホヤ軍団みたいなのがいないのがいい。

また、曲者っぽい演出家もきちんと出てきます。
しかも彼が3巻以降それぞれの苦悩と向き合わせるっぽいですよ。
いいですね。そういうの見たいですね。己と向き合うのは安全地帯から見ているだけなら安心だし楽しい。

1巻で早々にわかってしまうことなのですが、主人公の設定がとあるものになっていて、個人的にはこれは蛇足な気がしています。
この先いい風に転べばいいけど…安易な方向になったら辛いなぁ…他が面白いだけに。

ともあれ久しぶりに続きが気になりすぎる作品!
是非。


初回でも書きましたが、そういう相手に巡り合えるのは、幸せでもあり、最大級の不幸でもあり。

やまなか(仮)
貯蓄もないのに漫画をジャケ買いしては一喜一憂しているどうしようもない人間。
狭く浅く生きています。