見えないものが見えたなら『ホカヒビト』

醜く迫害された山姥に育てられた、死んだ母親のお腹から取り上げられた少年が、美しい薬師(くすし)と出会い、冒険を共にする。

というお話なのですが、いや~これまた私の好きな系統から名作になりそうな作品が出ちゃったなという感じ。
妖怪とかが出てきそうで出てこないかもしれない作品です。

北森サイ/講談社
『ホカヒビト』

作中の時代はどうやら江戸時代末期から明治にかけてっぽいですね。
この1巻の中だけで、飢饉で年貢がという話から、江戸の世が終わり新しい税制の話に移っています。
まだ世の中がとても貧しかった時代に、人には見えない『何か』が見える少年が主人公。
彼が見えるのはザ・幽霊でもザ・妖怪でもなく、どちらかというと伝承で本来は存在しないはずのもの…まあ妖怪といえば妖怪になるのか。
ホラーさはないですが、絵が美麗なだけでは済まないので、苦手な人は苦手かもしれない。
とはいえ最近はグロめの作品も多いので、そこまで取り立てて言うほどのものでもないんですけど。

自分が見えない、わからないからかもしれないけれど、妖怪とか、幽霊とかがホラーでなく描かれている作品に弱い。
良くも悪くもロマンがあるというか。
自分が見えないものが見えるというのはどういう世界なんだろうと。

この少年の出自がある程度すでにわかってしまっているのがちょっと惜しい気もしますが(母親のくだりはもっと引っ張れたのにな~)、それをもって余りある面白さ!
なにより続きが気になる。
この、『続きが気になる』って漫画というフォーマットに於いてはとても大事ですよね。

少年はどう成長していくのか?
この美しい薬師の正体は何なのか?
少しずつ明らかになるといいなあ。

ストーリーの軸がとてもしっかりした作品で、あっという間に1巻読み終えてしまうので、是非気軽に手に取ってみてください。
一瞬で次巻予告になるはずです。


しかしまあ実際妖怪とか見えたらめちゃくちゃ怖いから、このままでいいなあ。

やまなか(仮)
貯蓄もないのに漫画をジャケ買いしては一喜一憂しているどうしようもない人間。
狭く浅く生きています。