劇団スパイスガーデン 舞台『ブルーカラーズ』インタビュー
(公演レポートはこちら)
2年ぶりの本公演ですね。
山中 はい!今回は僕たちが演出をします。今まで10分~20分の短編作品の演出は経験があるのですが、本公演、1本丸々演出するのは初めてなので、今までで一番面白くしたいという意気込みがあります。
栗原 僕は…いつも通りにベストを尽くすだけです!
松尾 まあそうなんだけど(笑)
飯田 今回は自分たちの演出プラス客演の方がいるので、そこには気を使っていますね。
松尾 4人でずっとやってきているので、この4人の共通言語みたいなものがとても多くて。特に演出や芝居を固めていく上でその共通言語が出てくる。僕らはそれを共有できても、ゲストの役者さんたちに伝えるのが難しいところもあります。
栗原 価値観の違いもあるし、ニュアンスが捉え方が違ったりするので。
松尾 みなさん素晴らしい役者さんたちなので、絶対に魅力的に見せたいし、丁寧にやらなきゃなと。
あらすじやそれぞれの役どころなどを教えてください。
栗原 バブル崩壊後の地方都市、そこにある自動車工場が舞台です。山中・飯田・松尾はそこで働く人たち。その工場で事件が起こって、僕が保険会社の調査員として調査しに行くところから物語は始まります。
山中 僕は唯一既婚者の役です。賃金カットが進む中、家族を養わなきゃいけなくて、一体どうすればいいんだと嘆いて嘆いて嘆きまくる。
飯田 僕はこの中では一番アウトローです。台本のト書きではリーゼント。ギャンブル好きで喧嘩っ早い性格で、荒れ狂ってる。今までやったことのない役。一番本人とかけ離れています。
松尾 僕はフジオ・フジオという役で…名前の通りあまり上手くいってない役です(笑)。工業地帯の労働者の一面を表現できたらなと思います。下町の『愛に生きる男』像みたいな…。
自分たちが演出する上での強みはありますか?
山中 僕ら自身が役者なので、ゲスト俳優のいいところも見つけるのが早いです。この人がこんなことをやったら面白いだろうとか、話がどんどん膨らんでいきますね。
松尾 中に入りすぎないように、客観視も大事ですけどね。あとは僕らを支えてくれている母体が映像制作会社なので、映像はかなりハイレベルなものをお見せできるのも強みです。
2年間で、メンバーそれぞれの印象で変わったところはありますか?
山中 客演の方々に、ニュアンスをきちんと言語化して伝えようとしているのは(松尾)英太郎ですね。そういうところ、いいですよね…。
松尾 んん!?もっと上手く褒めてくれ!(笑)
山中 僕らだと一言でわかることも、全員がきちんとわかるように、丁寧に咀嚼して伝えてくれるんです。
松尾 やっぱり納得してる芝居とそうじゃない芝居って全然違うんですよね。だから納得してほしいし、そうしてもらえるようにきちんと伝えたいなと思っています。
栗原 飯田くんは…変わらないよね。喋らないし。
飯田 ん?…まあ確かに僕は変わってないですね。僕たち、リーダーは山中なんですけど、裏で色々回してくれているのは松尾なんですよね。最近は松尾がリーダーだなと…
山中 え!そういう話になるの?!
松尾 いやいや(笑)。でも結局、山中が一番『スパイスガーデン』っぽいんですよ。作風や性格も一番“らしい”。だから山中がリーダーで合ってるんです。
栗原 そうだね。バカな感じが。
山中 おい!誰がバカだ!(笑)
栗原 褒めてるんだよ!いい意味だよ。山中は、スパイスガーデンの象徴。熱くて、まっすぐで、調和の役目も担ってる。山中がいなかったら解散してますよ。
松尾 そういう栗原も、かなり変わりましたね。わかりやすく言うと…あんまり脱がなくなった。
一同 わかりやすい!(笑)
松尾 彼はネイキッドな男なんですけど、そこに対して疑問を持つようになりましたよ。脱ぐとしても、今までとは違うなと。
飯田 大人になったね。
山中 柔らかくなった。優しくなった。
松尾 そうそう!前はちょっと怖かったもん。元々はめちゃくちゃ優しいヤツなんですよ。根っからのスポーツマンで、判断も早い。
客演の俳優さんたちへのそれぞれの印象はいかがですか?
永岡卓也さんについて
山中 たっくんは、今回初めてメンバー全員としっかり絡みます。彼は柔軟だし、とても素直。器用な役者さんですね。
飯田 今回はたっくんはボケの役です。
松尾 多分、初めての役所なんじゃないかな?不慣れなところもあるかもしれないのに、すぐ修正してくる。信頼してます。
栗原 僕らも結構無茶振りしてるもんね(笑)。僕は、過去にかなり濃いシーンを一緒にやってるので、久しぶりの稽古初日で対面した時、ちょっと泣きそうになりましたね。
飯田 戦友、みたいな?
栗原 そんな感じ。今回の舞台は、僕とたっくんの会話で始まるんですよ。前回ガッツリ一緒だったシャッフルは、僕とたっくんで終わっていたので。
松尾 稽古見ててもそれは感じたよ!うわ〜懐かしい!って。
百瀬朔さんについて
栗原 朔ちゃんは最年少。なのに真面目!
山中 そう!めちゃくちゃしっかりしてる!!
松尾 年齢聞いてビックリしたもんね。
飯田 今22、3だよね。
山中 僕らが子供なのもあるけど(笑)、僕らより全然大人。この歳だったらコミュニケーション取ろうとしてちょっと力んだりすると思うんですけど、そういうの全然ない!でもそれで問題ない。それがかえってこちらから行きやすい空気を作ってくれてる。
栗原 シュッとしてるんだよね。大きい現場踏んできたんだなって感じです。経験値の高さをすごく感じる。
山中 勘がすごくいいですね。22歳でここまでできるなんて…悔しい!(笑)
幹仁さんについて
栗原 幹仁さんは、なんと初舞台なんです!
松尾 元々はミュージシャンの方です。今回も彼の生演奏がありますが、歌のシーンだけではなく、かなり色々なお芝居もしっかりやってもらいます。
飯田 もしかしたら一番難しいかも。器用さが求められますね。それを初舞台の彼に…。
山中 役者にはないものを持ってるんですよね!僕らは台詞の意味を考えるのが仕事なんですけど、考えることで失ってるものがあるというか…幹仁さんにはそれがないんですよ。自然に出た、何も濁りのない台詞とか。それを聞いた時、『台詞って何なんだ…』とずっと考えちゃいますね。
栗原 自分たちもこうだったのか、ということを教えてくれる存在ですね。無垢だった頃を教えてくれる。また、歌手として舞台に立っていたから、お芝居は初めてでも、舞台に立つということを感覚的に知ってるんですよね。魅せ方がわかってる。
飯田 意外と、というと失礼かもですが、普通にお芝居できるんですよ!できちゃうんだ!?っていう、嫉妬がある…。
松尾 嫉妬してたの?意外だね(笑)。
あらためて今作の見どころを教えてください。
栗原 今回は僕らが演出ということで、スパイスガーデンらしさが今までの本公演の倍になっています。僕たちらしさが色濃く出ています。
山中 ナンセンスコメディが大前提として、ミステリー要素もある。二度美味しいです。
飯田 舞台の時期設定が2000年前後で、あの頃の懐かしい色々が散りばめられています。そういうところも楽しんでもらえたら。
松尾 ありがたいことに、僕たちはいつも『いい書かれ方』をするんですね。でも今回はもしかしたらそうじゃないかもしれない。僕らの悪い一面を見られてしまうかもしれない。怖さもありますが、『スパイスガーデンに気をつけろ!』な一面もあるということで、そこすら楽しんでもらえたらなと思います。
スパイスガーデン
2008 年夏、2 カ月にわたるワークショップを経て選出された男たち、それが劇団スパイスガーデンである。劇団発足から間もなく、2008 年池袋シアターグリーンにて旗揚げ公演「バンカラ~友へ捧げる最後のエール~」を 上演。その後、年1回本公演を行う中、2014年には新たに“実験公演「刺激的庭」”をスタート。全く異なるジ ャンルの3名の脚本家を迎え、演出を劇団スパイスガーデンが担当するという新しい取り組みを始める。
「ブルーカラーズ」で初の本公演演出を行う。
『ブルーカラーズ』 http://atmovie.tv/spaga/
日程:2016 年 11 月 8 日(火)~13 日(日)
劇場:千本桜ホール(〒152-0004 東京都目黒区鷹番 3-8-11 第 3 エスペランス 3F)
脚本:田中眞一 「みんな!エスパーだよ!」「GTO」ほか
演出:劇団スパイスガーデン
出演:栗原寛孝 松尾英太郎 山中雄輔 飯田隆裕 / 永岡卓也 百瀬朔 幹仁
撮影:大村祐里子