映画『太陽を掴め』中村祐太郎監督インタビュー

20代の閉鎖感が印象的でした。監督もまた20代ですが、意識されたことはありますか?

そうですね、モロ20代というか…20代の感じを出しすぎましたね(笑)。今の20代の、ストレートで、ある種猥雑な感情を真っ直ぐに出したいと思いました。吉村くんを取材しながら脚本を書き上げたんですが、彼らのイメージや想像を膨らませたところもあります。
ストリートカルチャーが好きな層にいい作品だなと思ってもらえたら、というのが狙いでした。

やはり吉村さんの魅力と主人公・ヤットはリンクしていますか?

そうなりますね。2015年の秋に吉村くんと出会って、一緒に作品を作ろうと決めました。主人公ヤットのある程度の人物やストーリーの大筋は決まっていましたが、吉村くんに出会って彼と一緒に過ごして行く中で肉付けしていった部分は大きいです。
さらにそこから吉村くん演じるヤットを囲む人物がどういう人たちなら話が面白くなるか?を考えて、浅香さん、岸井さんをキャスティングしていきました。

ヤットを元子役にした理由はなんですか?

今は吉村くんもあの頃より大人になってまた顔つきも変わってきていますけど、初めてあった頃の彼の顔立ちが本当に美しかったんです。ピュアで、それ故の鋭さもあって…そのイメージがあって、元子役という設定をつけました。そのくせ大人に媚びるのが下手なところが“ヤットらしい”のかなと。

同世代の役者を演出するときに気をつけたことはありますか?

お兄ちゃんになった気持ちでやりました。あまり監督だからとかそういうのはなく、仲間というか兄弟のような近い感覚でした。
3人とも歳が近いのもあって、難しいことは考えずに、楽しく上手くコミュニケーションが取れたと思います。

全体的にタイトな画作りな印象ですが、ヤットとユミカのシーンを一か所あそこまで幻想的な演出にしたのは何故ですか?

単純に好きだからです(笑)。映画って夢を届ける芸術だと思うので、いい意味で逸脱したファンタジーやエモーショナルな体験を、必ず一箇所は入れたいんです。
僕はフィックス(固定)こそ映画だと思っていて、周りからも僕の作品にはフィックスが合うと言われていました。今は機械や技術等が発達して躍動感のある映像が撮りやすくなりましたが、やっぱりフィックス、つまりかっちりした固定の画面には独自の良さがありますね。
そのぶん、バンドのライブシーンは躍動感が出るようにかなり気を使いました。

監督にとって青春とはなんですか?

青春は、『疲れ知らず』!周りが見えずに猪突猛進できる状態。今この目先にあるものが全てで、他には何もいらない、自分が最高!と粋がってる。そういう状態が青春だと思います。
僕はこの作品がひと段落したことで、青春の終わりを感じました。熱っぽくうなされるような映画作りが完結したんです。これを見てくださった若い方々にも、前しか見えない状況の中で戦う熱さやその感覚をバトンタッチできたらいいなと思います。

 
映画『太陽を掴め』 http://taiyouwotsukame.com/
渋谷のライブハウス。歓声を受けステージに上がるミュージシャンのヤット。ヤットにカメラを向けるフォトグラファーのタクマ。タクマの元恋人であるユミカ。高校時代から友人関係を築いてきた三人は、お互いに複雑な感情を抱いていて…。
熱い視線を浴びる若手キャストの鮮烈な競演。心揺さぶる激唱で伝える、ヒリつくように純真な「青春×音楽」映画が誕生!新鋭・中村祐太郎監督が描く、89分間の”真っ赤な青春群像劇”。


中村祐太郎 監督
1990年5月11日 生まれ、東京都大田区出身。多摩美術大学映像演劇学科卒。
『ぽんぽん』(13)『雲の屑』(14)の両作品とも東京学生映画祭でグランプリを獲得。『あんこまん』(14)がMOOSIC LAB 2014で3冠を獲得する。
その他、撮影を担当した作品として、スチャダラパー「中庸平凡パンチ」、えんがわ「おばんざいTOKYO」がある。役者としても、園子温監督『TOKYO TRIBE』等に出演している。

撮影:大村祐里子